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「8年も付き合って、ラブラブな時期も喧嘩も一緒に過ごして乗り越えて来ました」
「うん」
「大げさですけど『歴史』があるんです」
「うん」
私が気がつかないうちに頼んでくれたのか、綺麗な可愛いケーキが目の前に出された。
「だから、今少し倦怠期なだけ、なんです」
倦怠期な、だけ・・・
もう1年以上エッチをしていない私たちの倦怠期はいつ終わるのか?
終わるの、かな?
「それってさ?
新しい人に行く勇気ときっかけがないから、今の彼でいいやって聞こえる」
軟らかい笑顔で、笑って、ずばりと憎らしい事を言った。
「・・・・っ!」
「女の子は愛されるべきだよ」
「・・・・」
「愛してくれない男なんか倦怠期になった時点で捨てればいい」
麻子も言わなかったようなひどい言葉を優しい笑顔に隠して言う。
言葉に詰まって何も言えない私に
そのまま優しい笑顔を顔に張り付けて
「俺だったら・・・鈴木さんに、愛している『から』なんて言い訳させない。
愛していると感じさせて、愛されていると感じさせてやる」
そんなふざけたことを・・・言う。
そして
「自分を大事にしろよ」
と追い打ちをかけた。
「阿部、言い過ぎ」
冷たく凍った空気を断ち切るようにマスターが安部さんの前に新しいカクテルを置いた。
「そう?ごめん」
ごめんなんて微塵も思っていないような口調でつぶやく。