新体制-5
「この中で疑いのかかる人物としては、やはり高島謙也って事になりますかね?捜査妨害してくるぐらいだから、何か突っ込まれては都合の悪い事があるんでしょうし。」
誰よりも先に華英が口を開いた。
「まー確かに何かしらの関わりはある事は確かよね。ただ何も裏が取れてない今の段階で特定してしまうのは危険よね。捜査を行う上で最も大切なのはどんなに誠実で素晴らしい人格の持ち主でも疑う事を怠ってはいけないって事。だから私は市長に返り咲いた梶山博之氏も、彼の功績も含めて素晴らしい人格者だと言う事は分かってはいるけど、でも疑いを解いてはいけないと思ってる。高島謙也氏の息子である高島広徳氏も刑事の勘としてはシロだと思うけど、裏が取れてない以上疑いは持っているべき。人間としては人を疑う事は本当に悲しい事かもしれないけど、でも私は田口徹から始まり何度も数えきれないぐらいにたくさんの人間に裏切られて来た。裏切られるとね、結構辛いわよ?でもね、あっちは本気になって私達を裏切りに来る。だから隙は見せちゃいけないの。私自身は人を信じる事を心掛けてる。でも刑事としての上原若菜はどんな人間に対しても絶対に疑いは持つ。犯人はそこから引きづり出すものだと言う事を忘れないでね?」
「は、はい。」
若菜が言うと言葉が重く感じる。確かにそうだ。クロをシロだと言い張るのが犯罪者だ。その嘘を見抜くのが警察の仕事である。華英も含めた全員が肝に命じた。
「華英もあんまりヒロトさんの事信じすぎると罠にハメられちゃうから気をつけてね〜?いくらテクニシャンだって言っても、あっちは大勢の女の中の1人なんだから、あんたは♪」
マギーが揶揄うような目で言った。
「な、何よぅ!分かってるもん。ヒロトと関係持ってるのはあくまで捜査の為だもん!」
「あ、なら安心したわ♪そー言えばさっき結衣ちゃんが今夜ヒロトさんと会うって言ってたけど…」
「え…!?今日は用事があるからダメだって言ってたのは結衣さんと会うから!?…ゆ、許さない…!」
あからさまに嫉妬する華英にマギーはニヤリと笑う。
「嘘だよー!そんなに入れ込んでて大丈夫かしら?ププッ」
「嘘なの!?信じらんない!?クソマギー!そんな事言ってると杉山さん寝取っちゃうからね!?」
「杉山君は浮気しないもん!」
「男なんて分かんないからね!私の方が若いしオッパイも大きいし!」
「ふん!相手になんかしないわよ!」
「どーだかね!」
いがみ合いが始まり若菜と石山は苦笑いしながら見つめていた。捜査会議中にこんなふざけた会話をしたら従来怒鳴られる所だ。しかし若菜が目指すのはそんな堅苦しい警察ではない。確かにもっと大きな会議の時だったら困るが、やはり女性らしく華やかで明るい雰囲気は大切にしたい、そう常々考えているのであった。