あなたは紅香と‥‥。(6)-2
「お兄ちゃん――」
美少女が、頬を赤らめながらも言ってきた。
「桃香のオッパイ、触ってみたい‥‥?」
「う‥‥」
しばしの時間が、流れていた。あなたは、再び岐路に立たされていた。目の前には蒲生桃香の裸身があった。キャラクター物の黄色地のバスタオルにくるまれ、大事な部分は隠されてはいるものの、幼くも魅惑的な――蠱惑的な少女の肌は、そこかしこで大きく露出していた。
バスルームのドアが開く音の後、桃香はいくらもしない内に脱衣所から出てきた。そして、あなたの目の前に立ち、あなたを誘惑してきたのだ。あなたは、先刻は放心状態だったが、
(はっ‥‥)
と気がつき、カチャリとこれははっきりした音を立てて脱衣所のドアが動いたときには、もう白香から離れていた。白香への手出し未遂を、桃香に看破される恐れはなかった。
(助かった‥‥。紅香、ありがとう‥‥)
あなたは、心の紅香に礼を言っていた。よく考えたら――よく考えなくても、あのまま白香の胸に触っていたら、大騒ぎになっていたかもしれないのだ。なぜなら、単にちょっと触るだけでは、あなたは満足できない。
(危険を冒してるんだから、ナデナデくらいはしないと損だろ‥‥)
そう考える。そのとおり
(モミモミくらいはしないと損だろ――いや、それよりも服を脱がして触るくらいはしないと、このせっかくの好機に、損すぎる‥‥)
そういうふうに考え、そのどちらかを、あるいは両方を実行する。そして、危険を冒しているから損だからと、あなたの行為はどんどんエスカレートしていっていただろう。
その過程で、白香が目を覚ます確率は、飛躍的に高まってゆく。同じ危険でも、その危険度は行為のエスカレートとともに、グラフ上で急カーブを描いて上昇してゆくのだ‥‥。
――あなたは、そういう計算が、苦手だった。勝負は一か八か、白か黒かと考える性格で、勝率のようなことを積み重ねて考えることが、不得手だった。
(だから、あのRPGでも勝てなかったんだな‥‥)
心の紅香の指摘は、あなたにそんな、苦い味はするが有益な気づきを、もたらしてもくれたのだった。
白香が目を覚ましてあなたの手をつかめば、そのとき彼女の服が脱がされていたら、言い逃れできる確率など、考えるのがむなしくなるほど低くなる。最後、いや最期になっていただろう。白香は、紅香にばらすぞと脅し、あなたは屈する。そして永遠に、この支配好きの女にこき使われる運命となっていただろう。
白香のおっぱいは、惜しい。しかしあの爆乳は、あなたをそんな陥穽へと落とし込む、まさしく魔の乳=魔乳だったのだ。
あなたの紅香は、道を指し示してくれたのだ。いくら感謝しても、したりないくらいだった。