あなたは紅香と‥‥。(5)-3
が、あなたのミスはむしろ、好都合だった。格好のテストになったからだ。悪辣な強敵が、本当に眠っているかどうかの。
彼女のほうがあなたをテストしていて、いまこの瞬間顔を上げて立ち上がり、目を剥いて怒ってくる、どやしつけてくる、そしてこの一件を紅香にばらすと脅してくる――これをネタに、あなたは永遠にこの女の使用人、いや奴隷としてこき使われる――この蒲生白香がそれくらいのことをやりかねないことは、仕かけてきかねない女であることは、あなたもこれまでの日々で学んでいた。
だが、これくらいの小声であれば、言いまわしも手伝って、何を言ったかははっきりわからないはずだ。いくらでもシラを切り通せる。無言のまま彼女に近づいて、豊かな胸のふくらみに手を伸ばし、手が触れたその瞬間、跳ね起きた彼女にがっしと動かぬ証拠をつかまれたら、言い逃れはできない。そうなればアウト、最後だったのだ。その危険性を回避する、これは格好のテストとなったのだ。
蒲生白香は、ぴくりとも動く気配を見せず、変わらずすやすやと眠っていた。
(勝った‥‥)
あなたは、今度こそわずかでも声にしないように気をつけながら、かがみ込んだ。そして目の前の、これでもかというボリュームを見せつける服の胸に、そろそろと手を伸ばしていった。まるで、睡眠中でも主と独立して妖しいムードを醸し出すのが役目とでもというような、犯罪的なまでの巨乳に‥‥。
何に勝ったのかは、よくわからない。天運。そう呼べるものがあるかないかはわからないが、うっかりミスが上手い具合にテストに転化したという認識が、あなたにそのような独白をさせていたのだった。