第二話 主婦、飯島弥生の悪夢-2
≪悪魔がやって来た≫
男は弥生が倒れるのを抱き留めると、玄関のドアに鍵を掛け、そのままリビングに上がり込んできた。
弥生は痺れる体ながらも、「あ、あなたは誰なの…」とその男の襟首を掴んだが、「まあ、いいじゃないか」と弥生をソファーに投げ出すと、両手に手錠を掛けてきた。
「おやおや、コーヒーがあうじゃないか。頂こうかな」
「か、勝手なことをしないで…」
弥生は懸命に立ち上がろうとしたが、男に突き飛ばされ、再びソファーに仰向けに倒れてしまった。
男はキッチンからコーヒーカップを手に戻ってくると、「さてと、何をして遊ぼうかな?」とニヤついている。
弥生はソファーの隅で身を寄せ、「か、帰って下さい」と言ったが、男は「コーヒーくらい飲ませて下さいよ」と向かい側に座った。
「旨いなあ、このコーヒーは」
「早く、早く出て行って下さい」
何をしようとしているのか、悠然とコーヒを飲む男。髪は短め、頬に小さな傷があり、ニヤニヤ笑ってはいるが、目つきは鋭い。
不気味な感じがしたが、勝手なことをさせたくない弥生が睨みつけていると、男はタバコに火をつけると、図々しくも「灰皿はどこだよ?」と聞いてきた。
「禁煙です」と言い返すと、「そうか」とプカリ、プカリと吹かした後で、そのタバコをコーヒーカップに投げ込んだ。
「35歳かな?」
「か、関係ないでしょう」
「そんなに怒るなよ」
「もう帰って下さい!」
「ゆっくりさせてくれよ」
全てこの調子。いったい何をするために上がり込んできたのか、不気味さ、怖さもあったが、弥生はイライラしてきた。が、その時、忘れていた便意がギュルギュルと襲ってきた。我慢するのは難しい。いや、それより、トイレに逃げ込めば、窓から助けを呼べる!