第一話 陶芸工房「篠田」の悪夢-3
「ねえ、潤子さん」
一旦、玄関を出た矢沢由美子がちょっと不安そうな顔で戻ってきた。
「由美子さん、どうしたの?」
「道路に黒い車が停まっているのよ」
「道に迷ったんじゃないの?」
ここは市の中心街から車で10分ほど山の方に入ったところにあるので、人家が少なく、単調な景色なため、道に迷う車は時々あった。
「でも、一昨日も停まっていたのよ」
「そうかしら」
潤子は玄関から出て、由美子の指差す方を見ると、確かに黒い車が停まっていたが、運転席のシートが倒されていた。
「昼寝しているんじゃないかしら?」
「でも、ストーカー被害もあるらしいから、戸締りはしっかりした方がいいわよ」
「そうね」
「じゃあね」
「はい」
潤子は矢沢由美子を送り出すと、彼女のアドバイスに従って、玄関の鍵に鍵を掛け、少し早いかなと思ったが、雨戸も閉めた。
さてと、これでいいわね。さあ、支度しなくちゃ
今夜は可愛がっている姪、大学1年生の由香里(ゆかり)が遊びにくる。着替えて夕食の準備をしなくてはいけない。