紅香語り(8)-3
そしてまた、今日のデートで、彼にこのことを言うべきでしょうか‥‥。
(でも、どうやって切り出せばいいのか、わからない――)
わたしは、海田くんに対して秘密を抱えていることへの罪悪感が、バストサイズのアップの件とともに、プレッシャーとなっている自分を、発見させられることになりました。
また急に、海田くんへの愛おしさが込みあげてきて、せつなくなってきました‥‥。
(――あのソファの上で‥‥)
わたしは空想、いえ、妄想しました。
(極力、おっぱいのことに想いが行かないように‥‥頑張るのよ、蒲生紅香‥‥!)
そう、自分に言い聞かせながら。
(海田くんが前から来て、手が、腰をおろしているわたしの肘に添えられて――)
わたしは目を閉じて、その情景を胸に描きました。肘に海田くんの掌を感じられるように意識を集中して。
(――わたしは短いスカートをはいているけれど、彼はその露わな太ももや、ふくらんだ胸には目もくれず、ただ、プラトニックにわたしの顔を、瞳を見つめているの。そして、こう囁くの。「紅香、好きだよ」‥‥――)
(わたしもプラトニックに、そっと目を閉じるの。やがて、ふたりの顔が近づく。それをわたしは、肘にあてられた海田くんの掌から感じ取るの‥‥)
(お互いの唇が、ゆっくり近づいてゆくの。一ミリ、また一ミリと‥‥)
(あ、でも――海田くんも不安定な姿勢だろうし、体を近づけると、バスト九三センチのわたしの胸に、彼の体のどこかが触れてしまうかしら‥‥。唇同士が出会う前に――)
(この豊かなおっぱいの、ツンととがったお乳首に、海田くんの胸板が当たって‥‥。――あ、あ、あああ‥‥!)
きょう何度目でしょうか。わたしはまた、螺旋階段を上るように、いやらしく高まっていったのでした‥‥。
そこで、わたしは結局、また煩悩に負けてしまったのでした。つまり、お乳首に現実に刺激を感じてしまったのです。わたしの官能は正直に反応し、甘い刺激でわたしは、はしたないことに、またまた、濡らしてしまったのです。たった今はきかえたばかりの清楚な白いパンティーを‥‥。
わたしはそれからシャワーを浴び、再度パンティーを替え、そして今度こそ、
(妄想に、気をやらないように‥‥)
と念じながら、お洗濯物を室内に干す作業に戻りました。それを終えると、海田くんと会うために、頭を切り替えようと努めました。
わたしは身支度を整えると、外へと出ました。摩擦擦ブラの刺激を、お乳首に感じつつ。
マンションの廊下の、外の景色が見渡せるところまで来ると、空はますます灰色さを増したようでした。まるで、わたしたちの行方を暗示するかのように‥‥。