4月:異動-5
きつく抱きしめられながら
この人も不安ななんだと気づいて私もギュッと抱きしめた。
「あ・・・ぁ」
抱きしめ合いながらお互いの気持ちいいところを探るように私の中をかき回す。
「愛してるよ」
嬉しいはずのその言葉は、ほんの少しの哀愁とともに
私の心に沁み込んできた。
何度も繰り返すキスは、次の約束をお互いに忘れないようにするためのようで
その執拗さに唾液が口元から流れ出た。
銀色の糸を引いて
いやらしい水音が響いて
私たちはその快楽に、寂しさを覆い隠した。
「あ・・・ぁ・・・ぁぁぁ」
お互いにその身体の中で果てて、お互いの汗が混ざり合うように抱きしめ合った。
「身体をあげる。
心をあげる。
だから、小川くんの心を頂戴」
思わず出た本音に、小川くんは寂しそうな顔を一瞬だけして嬉しそうに笑った。
「へぇ・・・身体も心もくれるんだ?」
「え・・?」
何か変な事言った?
「浮気するなよ?」
しないよっ!
「他の男と飲みに行くな」
行かないよ!
「この身体を他の男に触らせるな」
触らせないよ!
「キスなんてするなよ」
しないよ。
「小川くんもだよ!」
「俺はほのかさんだけだから」