紅香語り(1)-3
そして再び、スタンドミラーの前に立ちました。わたしが そっと自分の胸に手を伸ばすと、鏡内の女のコも同様に、彼女の豊かな乳房に手を伸ばしました。自分で言うのもなんですが形よい、そしてかなりの巨乳です。服の上からでも、男の人がついこの胸に、このおっぱいに、目が行ってしまうのも、わかります。海田くんも、きっとそうなのでしょう。
「ん‥‥」
乳首に触れると、軽い刺激がありました。そのまま指でくりくりと転がしました。
「ンン‥‥♡」
声は出ましたが、摩擦ブラの刺激と、大差ありませんでした。そこでわたしは思いきって、右手の親指と人さし指とで、鏡のコのその可憐なお乳首を、つまんでみました。乳輪が、ぷつぷつと粟立っているのを、指に感じながら――。
「ああン! ふううンっ!」
自分でもびっくりするほどの心地よい刺激が微電流のように全身に走り、同時にまた自分でもびっくりするほどのいやらしい声が、喉から漏れました。
やはり、人間の指で弄られるのは、特別な快感なのでしょうか。それがたとえ、自分の指であっても。こんな、摩擦ブラなんてものと違って――。いえ‥‥。
(それとも、わたしがいやらしいだけ――?)
わたしは、そう思い至り、落ち込みました。そして、暗く、もやもやとした感情に襲われました。わたしはいままで、お姉ちゃんに調教されることで、どことなく受け身な、無責任な心持ちでいたのでした。そのことに気づかされもしました。
(――あれでも感じてしまっていたし‥‥)
わたしは、網籠へと追いやったその下着に、目をやりました。そう。お姉ちゃんに着用させられていた、摩擦ブラです。
(いやらしい責め具‥‥。でも――)
わたしは、落ち込んだ自分の心に言い聞かせるように、開き直ることにしました。
(感じてもいいや‥‥)
と。つまりわたしは、前向きに考えることにしたのです。また、
(海田くんが晴れて彼氏になったときにモミモミされるための、準備になるし‥‥)
と、そう考えると、気持ちまで晴れやかになるようでした。
しかし、わたしはまた、その気持ちとは裏腹に、部屋の明るさが減ってきたのを感じていました。
これは、外の、お天気の話です。雲行きが、怪しくなってきたようです。