桃香語り(6)-1
(お姉ちゃん――)
わたしは、胸の内でそっとつぶやきました。目の前の紅香お姉ちゃんに対してではなく――白香お姉ちゃんに対して。
(いつまでも子どもだと思って、甘く見ないでね‥‥。桃香が何も考えていないと思ったら、大間違いだよ――)
少しの間に、わたしの考えが変わっていました。
わたしも、計画を練りはじめたのです。ひそかに。あくまでひそかに。こっそりと。
(いつかそのうち、白香お姉ちゃんも、おっぱいペットにオとしてあげるよ‥‥)
という‥‥。
もちろん、白香お姉ちゃんは頭もいいし(疑りぶかいし-笑)、力も女子にしては強いです。押さえ込まれたりすると、わたしも紅香お姉ちゃんも抵抗できません。コドモの頃は、折檻されたりもしました。――ま、公平に言えば、わたしの家庭教師をしてくれたりもしたんですが。
(あの胸‥‥)
ふと、その頃の記憶が、思い出されました。より正確には、そのころの見た光景が。
正直に言います。わたしは、勉強を教えてもらいながら、家庭教師をただで務めてくれているお姉ちゃんの胸、いや、
(あの、おっぱい――)
が気になっていたのです。その頃に何度となく間近で見た、お姉ちゃんの胸の豊かなふくらみが、勉強の内容よりもはるかに鮮明に甦ってきたのでした。
あの頃のお姉ちゃんは、いまのわたしと同じくらいだったと思います。でも、服の上からですが至近距離で見るお姉ちゃんの
(やっぱり、いろいろスゴイよね、お姉ちゃんって‥‥)
わたしは、もしかしたら、あの頃から、白香お姉ちゃんのおっぱいを心ひそかに狙っていたのかもしれません。こんなことを思うなんて、わたしも、大人になったのでしょうか‥‥。
(――思い出した。そうだ、自転車だ‥‥)
わたしは、家庭教師の
さすがにわたしも恥ずかしかったのですが、下手に練習していて友達に見つかったりするとよけい恥ずかしいと思い、結局練習しないまま、乗れないままだったのです。
(このままじゃいけないな‥‥)
と、自分でわかりながら‥‥。いま思うとだめなコでした。
白香お姉ちゃんは、そんなだめなわたしを、夜に引っぱりだして、自転車に乗る特訓をさせたのです。そのおかげで、わたしはちゃんと乗れるようになりました。いまでは同世代の女の子より上手いくらいです。夜にやったのは、友達に見つかることを恐れるわたしへの配慮でした。――あの頃は、白香お姉ちゃんもわたしに対して優しい、いい時代でした。思わず、遠い目をしちゃいます‥‥。
‥‥‥‥。
――いまは、違います。残念ながら。
なんだか、
(わたしの白香お姉ちゃんへの思いにも、歴史があるんだなあ‥‥)
とも思ったりしますが、まあ、とにかく、白香お姉ちゃんは強敵なのです。感慨にふけっていても、何も始まりません。
が、しかし――手はあるのです。いい作戦が。
わたしのなかに浮かんだそれが、いま、形になりつつあるのです。
(「ざいだん」の、あの「さいいんシステム」で、ね‥‥)