白香語り(3)-4
(本当は、海に行きたい‥‥)
わたしは、ビーチチェアを開いて腰を下ろしながら、思った。
(電車でいい‥‥。いつもの安久須駅で降りず、そのまま乗っていって――)
海で使う競泳用水着、そして三角のビキニも、ちゃんと買ってある。でも、まだシーズンじゃないし、いまは、このベランダで我慢だ。
そしてまた、泳げる場所ではないが、海の抜群の景色を眺めることができるという隠れスポットも、『SHARKNADO』のマスターに教えてもらっていた。あまり知られていないが――知っている人は滅多に人に教えないから――特に夕焼けどきは、最高だそうだ。
そこなら、いま行くこともできる。が‥‥。
(あなたにはいま、やるべきことがたくさんあるわ。――そうでしょ、白香)
と、わたしは自分に言い聞かせ、その気持ちを鎮めた。
海用の水着は、紅香のも買ってある。桃香には、本人が海に行きたがらないので、買っていない。まあ、観賞用として買ってあげてもいいんだけど‥‥、
(あれは、紅香のほうが似合うし‥‥)
と、チェアでわたしはひとり、ほくそ笑んだ。サングラスをかけているから、きっとニヒルな感じになっていただろう。
わたしが、紅香に着させるために買ってあげたのは、白の競泳用水着と迷って、かなりきわどい黒ひもビキニだった。きっと着けさせると、あのたわわな美乳に、まるで吸いつくようにぴったりと貼りつき、さぞかし映えることだろう。サイズは、少し小さめを選んでおいた。くいっ、という感じで、あのコのまろやかな
(ふふふ、楽しみだけど――まあ、それは夏にとっておいて‥‥)
いまの段階で、やっておくべきこと――やらせておくべきことは、まだまだある。
サングラス越し、ガラス戸越しのソファでは、海田くんが再び紅香の裸体にのしかかり、胸に顔を埋めるようにしていた。きっと、おっぱいを舐めはじめているのだろう。
(計画の、進行――‥‥)
わたしもビーチチェア上で、これまでの日々とこれからの予定を、己の胸の内で再び交差させはじめた‥‥。