白香語り(2)-2
前に、桃香の家庭教師をやってあげていたことがある。私的なもので、もちろんただでだ。最近は、忙しくなってできなくなってしまったが。
(――そういえば、もっと昔は、紅香の家庭教師役もやってあげてたっけ‥‥)
紅香は、わたしほどではないけれど、昔から桃香よりは勉強ができたので、さほど手はかからなかった記憶があるが‥‥。
(あの頃は、無邪気で楽しかったな‥‥)
わたしは、ふたりに悟られないよう、胸のうちでひそかにため息をついたのだった。そう、いつまでもコドモではいられないのだ。――懸架といっても、完全に空中に吊るし上げたわけではない。紅香の裸体は、ニーソックスの足の前半部が床についている形で、両腕を頭上に上げた状態で保たれていた。足の接地部分を置くことで、体重が手枷の部分だけに集中するのを防ぐ形だ。紅香くらいなら、完全に空中に吊るし上げることも強度的に可能なはずだったが、それは枷が手首に食い込み痛めるかもしれないので、そうはしなかった。
「うう‥‥。こんなことしなくても、言うこと聞いているのに‥‥」
紅香はしくしく泣きながら、うらみ事を言った。でも、あの娘が悲しそうに首を振る仕草だけで、あの娘のたわわな乳房が、女のわたしでもどきどきするくらい、淫猥に左右に揺れるのだった。
これなのだ。調教の目的――いや、指標は。
「ふふふ、こんないやらしいオッパイしてたら、どうされても文句は言えないわよ、紅香」
「ううー、言わないでぇ‥‥」
消え入りそうな声でうめく紅香は、白いパンティー一枚と紺のニーソックスきりの姿だった。やわらかそうなおなか、くびれた細い腰、太ももから伸びる脚のほとんどが、その肌を露出させていた。これ自体は、初めてのときから何度かさせていた姿で、紅香も羞じらいながらもおとなしく脱いでくれたのだが、懸架されたのはショックのようだった。
「ほらほら泣かないで。桃香、拭いてあげて」
「はーい」
桃香が近づいてゆく。わたしは、重ねて言ってやった。
「こうやったほうが、あなたのためにもいいのよ。今日のメニューはちょっと刺激があるやつだから‥‥」
わたしの言葉に襲い来る被虐を予想したのか、紅香は泣き止んだ。その紅香に、ハンカチを手にした桃香が体を寄せて、涙で濡れた顔を拭きはじめた。トップレスの正統派巨乳美少女と、服こそ着ているものの、やはり胸の起伏ははっきりとわかる、コケテッィシュな美少女。その様はなかなか絵になっていた。わが妹たちながら――。
(いやらしいじゃない。ふふ‥‥)
わたしはその思いを、口にしなかった。