あなたは平凡な男子校生。(4)-3
桃香というその少女は初めて見る。幼い顔をしているが、なかなかどうしてコケテッィシュな美少女だった。そしてその胸も‥‥。
(い、いや、白香だけでなく、妹にまで気をとられるようでは、いかん――)
白香が『SHARKNADO』であなたに話した「わたしたち姉妹以外の誰にも」は、白香と紅香ふたりだけでなく、この桃香以外にも、ということになる。逆に言えば、このコにはすでに明かしているだろう。そういう雰囲気だった。
高椅子は木製で、背もたれもあり、脚立の代わりなどではなくちゃんと椅子として頻繁に使われているらしく、使い込んだクッションが敷かれていた。そして、人の全身の姿が映るであろうスタンドミラーは、枠やつくりはシンプルだが、横幅がかなりあった。窓からの陽光に配慮してか壁際に置かれていたが、やはり飾りではなく実用という感じがした。
「それはね、家庭用じゃなくて、プロが使う特別なものなのよ」
あなたがその大きな幅広の鏡に目を取られていると、蒲生白香が横から言ってきた。
「ふうん‥‥」
あなたはうなずいた。が、考えざるを得なかった。白香の言葉が正しいとすると、これは特別な‥‥特注品のようなものなのだろうか、と。
(そんなのが普通の家庭に――しかも女子校生だけで住んでいる家に、なんで必要なんだろう‥‥)
あなたは首を傾げたが、見当はつきはしなかった。