あなたは平凡な男子校生。(2)-3
何カップ、という、女性のバストを現わす言い方があるのは、知っていた。しかし、
(八〇センチは、たぶん超えてる。八五――くらいはあるかも‥‥)
と蒲生紅香の胸を見て興奮したあなたも、そのカップのことには、思い至っていなかった。
ネットやら何やらで、いろいろ聞いたことはあった。アイドルの誰それがFカップとか――。
(「Gカップ豊乳祭」なんていうのも、雑誌の見出しであったな‥‥)
“清純派として売り出し中のグラビアアイドルの誰それは、実はHカップの巨乳の持ち主”なんていう情報には、あなたは一生そのグラドルにはリアルでは縁がないだろうにせよ、興奮させられたものだが‥‥。
「なんだ、興味ないの? 嘘でしょ?」
蒲生白香は、あなたの目を覗き込むように、にやにやと笑った視線を送ってくる。それに抵抗を覚えたので、あなたは、背筋を反らし気味に、
「興味なくはねえけど‥‥。カップ――とか、よくわかんねえし‥‥」
と、正直なところを口にした。サイズ、はわかる。だが「カップ」というのは‥‥。
(まあ、おっぱいの大きさだろうが‥‥)
と思い当たりつつ、間違っていたらと口にできずに逡巡するあなたに、蒲生白香は、妹・紅香のそれを教えてくれたのだった。
「あのコね、見た目もけっこうなものだけど、中身もスゴイのよ。いわゆる、着やせするタイプ――」
白香から知らされた、あなたの愛しの蒲生紅香の乳房のカップは、あなたにショックを与えるものだった。
いや、ショックは大袈裟かもしれない。しかし、軽い衝撃は、確かに感じた。
「あのコ、あれでね、すでにHカップ、あるのよ。だけど‥‥」
これはあなたを動揺させた。『SHARKNADO』の店内には音楽が流れ、またこのときはあなたたちのそばに誰もおらず、視線さえ感じていなかった。にも関わらず、彼女はあなたに顔を近づけ、囁くようにして、さらにこう付け加えた。
「もうちょっとアップしたほうがいいと思ってるんだ‥‥。そうね、Iカップくらい?」
自身もかなりの巨乳である蒲生白香は、にんまりと笑って、あなたにそう告げたのだった。