やって、やられて、やり返して-1
女の子どうしセックスするのどういう意味があるのかと、栞理の陰唇にくちびるをあてがい、思うの、パパとの初めては思い出せないけれど、ママとの記憶はいいところもあると思いたいって、ママはあたしに男役みたいなの求めていたし、あたしもそれで納得して演じていたんだろうね、でも栞理から責められるの困惑しながら嫌いじゃない順子がいるのわかっていた、どー仕様も無いってママに似ているあたしが、嫌で仕方なく、そんな栞理が好きな自分というの? 否定できないしさ。
栞理と暮らして、二週間。
「栞理は妹ができあまり僕に甘えなくなったな」
栞理、順子どちらにはなしかけるでもなく、慎二さんが食事時につぶやくの。
「続けていける関係ならいいと、わたくしは思います」
言葉の力強さとは裏腹に、あたしに同意を求めるみたいな、子供みたいな栞理の表情だったのよ、どこか許しを請うような、目が泳いでいるみたいなあの感じ、覚えがある……
その夜の栞理との行為の後、抱き枕みたいに彼女に抱きついていたのに、その存在が居ないことに、朧げに不安になって、それはママが居なくなるという感覚に近いものだった、もう家族に感じていたんだね栞理のこと。
夢見心地にぼんやり、栞理を探しにいくのって、幼子がママを追いかける姿とよく似ているんじゃないの? 気配のする方に、なぜかその気配って、慎二お兄様の部屋から感じるんだよ、おかしいよ、そんなことがあるはずがないでしょ、こんなことって、現実であるはずが無い、きっと夢の中なんだって、
「嫉妬することでこんなに燃え上がれるとは、思っていなかったぞ」
「あああ……お兄様すごい、そこもう少し」
鍵が掛かっているのかは知らない、ノックひとつで行為を止められるのかもしれないのに、
「姉妹に、家族になったからなのか、ずいぶんと激しいじゃないか」
「そんなことを愉しまれているお兄様もそうとうに狡賢いですわね、妹のセックスを覗きみし、それを兄妹の興奮の材料になさるなんて」
「言うねえ栞理、君だってこんなに愉しんでいるんじゃないかね? こんなに濡れているのは初めてだよ」
蘇るパパとの記憶、見えてるはずの無い天井から俯瞰したように思い出すパパとの初めての行為、キッとする耳鳴りのような血圧の瞬間沸騰するような意識を失うような、その一瞬にそのことを黒塗りにされたように忘れ去る刹那……
どれだけ意識を失っていたのか、あたしにもわからなかったわ、気が付いたら自分のベッドに震えて座っていたもんだから、時計の針を見てもその文字盤の意味するところがわからないの、時計盤を見ても時刻が読み取れないんだよ、意味わかんないよね、ついさっきまでできていたことができなくなる感覚なんてさ、順子もさぞかし驚いたというか、なにこれ。
でもさ、だけどもさ、はっきりしていることがあたしにはある。
栞理に裏切られたということ、いえそうじゃなくって彼女は兄という愛人を持ちながら更に順子という愛人を持つことで、豊かな愛情を独占したい人なんじゃないのかって、疑いだしたの、このままじゃいられない、愛してるのに、法律上家族になったって言うのに、絶対に白黒つけなきゃ気がすまないよ! だって栞理のことが好きなんだから、ママという彼女を振ってまで家族になったあの子を信頼していたのに、こんなこと許せるとしたらあたしの順子の愛情はウソになるじゃん、そんなあたしを否定することなんてアリエナイ、あたしはとても卑しくて醜いから、ママからそういわれて育ってきたから、きっとこんな考えになるんだろう。
できるだけ次の日の朝は知らん振りをするのだけれど、兄妹でどうして愛し合えるのかがやっぱしわかんない、親子は気持ちが悪い、一線を超えた後でもやっぱりキモイと思う。あたし順子の事が嫌い、大嫌い、それなのにやり過ごすだけで現実から逃げてきた、何をどうしていいのかわからないからやり過ごしてきただけ、本当は叫び出しそうなのに、泣きだしそうなのに、逃げ場もないし泣いたって許してくれないことが分かっていたから、ただやり過ごしてきたのに、この二人が愛し合うことが信じられない、順子はやり過ごしてきただけなのに、この二人許せないよ、腹違いの兄妹ということまではわかっていても、それも確かめたい、順子のために。
「順ちゃんなにか顔色すぐれませんね、学校大丈夫かしら」
食欲なんか全くなくって、白湯だけを飲むのが精一杯だった。
「一応はガッコには行くわ、体調悪くなったら早退ってバックレ技使うから」
「学校など行かなくても君は優秀だからな、妹にも少しでも見習わせたいさ」
「栞理さんには魅力ありますから、別に勉強だけじゃないのではありません?」
愛があるから、家族だからめんどくさいの、嫉妬するの、仕方が無いじゃないあたしは愛より先に性を教えられたんだから、これが順子にとっての愛でしかないわ。