やって、やられて、やり返して-2
慎二さんがお勤めに出られるときには必ず暗証番号つきシリンダー錠というセキュリティーの高い鍵を掛けられるのだけど、その日はしっかりとその番号を暗記したの、蛇のようなあたしの目で、しっかりとね、そしてあたしたち姉妹も登校のためバス停に向かう。
バスに揺られながら、栞理のさらりとした黒髪がゆれているの、ああかわいい子だなって、こんなかわいらしい娘がお兄様とできているなんて、いったい誰が信じられるだろうか、信じられないならどうしようかな? 順子をつかって報復してみようかしら……
だったら早いほうがいい、鮮度が問題になる、こんなキモイやりかたいいとは思えないけど、きっと篭絡できると、そう信じたい。
授業中先生に吐き気を訴え早退する、実際昨日のこと思い出すだけで気持ち悪くなれる、その足でホームセンターに向かうの、園芸コーナーの一角にスポイトとかビーカーに混じってシリンジと呼ばれる注射器があるのよ、それを買い求め、二条家っていう今のあたしの家まで戻る。途中何度か栞理が心配してくれ、ラインを送ってくれるのがうれしいけど、今に見てなさいって、内心わくわくしてた。
家の慎二お兄様の部屋には鍵がかけられている、外交官だけにセキュリティには気を遣う必要もわかるわ、けどね……そんなものは突破すればいいだけのこと、だってあたしには確信があった。
解錠業者にはあらかじめ連絡を入れておいた、もし時間が掛かってしまったらアウトだから。
「二条さんですね」
「すいません、待ちましたか?」
「いいえ、いま到着したところですよ」
女子高生が来たので少し困惑してるって感じの、神経質そうな銀縁のメガネを掛けた中年男性が家の前に車をとめ、あたしのこと待っていてくれたの。
家に入る鍵はもちろん持っていたから、信用はしてくれたみたい、念のために生徒手帳も開示、「鍵を紛失してしまってと」どこにでもありそうな理由をつけ、慎二お兄様の部屋の前まで案内し、「番号はもちろん覚えているんですよ」というと、
「ああ……それだったなら、後料金はお安く済みますよ」と少し残念そうな感じ、彼のような業者から見れば、せっかくの料金を取れなかったのが残念なのか、いいえ多分彼のような職人、それも神経質そうなタイプはきっともっと難しい仕事が好きなんだろうって、ただなんとなく思うの。
仕事は迅速なもので、腕はいいんだろうけど、
「いかがですか? なんでしたらオプションで鍵のオリジナルも作成いたしますが」
そういう自信たっぷりなとこが、鼻に付いたし、それよりも今はやらなければいけないことがあったから、
「それには及びませんわ、どうもご苦労様」
提示された12000円をカードで支払い、玄関まで業者を見送ったの。
慎二さんの部屋に入り、ベッド脇のゴミ箱を覗き込めば、案の定ソレは在った……
男の人の部屋に入り込み物色するというのって、なんか興奮してきちゃう、悪いことしてるんだって思えばソレが逆にそそるような、フフフ、あたしってどうしよう。
かつて何度もみてきて、久しぶりよね、この白い毒液。
ゴムを破り、こぼさないようにプラスチックシャーレに絞る、そしてその白い液をシリンジに吸い上げるの、やばいドキドキしてきちゃう、稀代の変態女め。
何の前触れも無くスマホが震えてさ、栞理からのラインが入る、
内容なんて他愛のないちゃんと寝ているかの確認みたいなものだけど、心配する栞理を確実に裏切っているって、そう思うと、罪の意識にドコまでも興奮してしまうの、興奮はするけど強烈に頭は冴えている、シリンジをできるだけ奥深くに挿入して、慎二お兄様の精液をあたしの中に注射する、一部始終をスマホに撮り、栞理ちゃんのお兄様のスマホにラインをつかって一連の画像をおくりつけてやったわ、メッセージとともに。
残ったザーメンはすべて舌で舐め取り、パパの精液と味を比べてみた、「ふ〜〜ん、男のなんてどれも一緒ね、てか苦い」何よりあたしは栞理を裏切り、勝った気でいられたの、すっごく気分いいのよ。
程なくして、スマホにメッセージ。
『妹には逢いたくない、仕事を早退しなければいけない、品川駅まででられるか?』
そういえば今日は北品川にあるセルビア大使館に行く用事があるっておっしゃられていたかしら、なるほど、じゃあJRで行こうかしら。
『4時でいいでしょうか』
おかしいいのだけれど、勝ち誇った順子ってば慎二お兄様のオンナにでもなった気になっちゃっててさ、デートにでも行くような気になってんだよ、あははは。
『いいだろう、それまでに仕事を片付けておく』
スマホをベットに置いてパンツを穿こうとして、ちょっと手を止めてしまう、「パンツに付いたザーメン、匂うかなあ、ま、いっか」子供のころなんてそんなの気にしなかったのに、パパが悪いんだからね、悪いのパパなんだよきっと。
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