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梨花
【その他 官能小説】

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梨花-59

 折角付けた鈴を取る前に記念の写真を撮っておこうということになった。オサムは
 「思い出は狩りの角笛、風に吹かれて消えてなくなる」
 と良く言う。それはアポリネールというフランスの詩人の詩の一部を取って自分流に変え、短歌のようにしたのだという。つまり写真やビデオや録音を嫌っているのだが、性器に鈴をぶら下げた梨花の姿を見てから少し考えが変わったらしい。やはり良いものを長く残る形で定着させておきたいというのは人間の自然な思いなのだろう。凝り性なので安いカメラでは駄目だと言って10万円近くもするデジタルカメラを買った。これで撮ってパソコンに取り込み、ホームページを開いてインターネットで公開すればたちまち梨花はインターネット・アイドルだぞと、オサムは何処まで本気か知らないが、それからは毎日梨花を裸にしたり服を着せたりして撮影した。梨花はパソコンのことは何も知らないのでインターネットと言われてもなんだか良く分からない。

 【坂本梨花 24才
  今日からホームページを開きます。ラビアにピアスしている好奇心旺盛な女の子です。夜は銀座の『マハル』という店で働いていますからお金持ちの君は飲みに来て下さい。お金のない君はこのホームページだけで楽しんで下さい。モロ出しの写真はありませんが、男の子が見て喜びそうな写真だけを選んで公開します。ピンナップとしてお部屋に飾ってくれてもいいし、厭らしいことを想像しながら私の写真でマスターベーションしてくれてもかまいません。更新は不定期です。】
 
 オサムは梨花の名前でホームページを開設し、梨花の写真を多数掲載した。写真の腕は良くないがモデルがそれを補っているから少しずつ反響も現れ始めた。2回更新した所でどこかの雑誌に取り上げられたようで、爆発的にアクセスが増えた。
 「おい、やったぞ」
 「何が?」
 「ついにスポンサーが現れたぞ」
 「何の?」
 「お前のホームページのスポンサーだよ」
 「ホームページって何?」
 「頼りない奴だな。まあいい。お前もとうとうインターネット・アイドルだ」
 「良く分かんないけど、それってどういうこと?」
 「うん、つまりな。お前の名前で俺がインターネットにホームページを作ってお前の写真を載せてるだろう」
 「うん」
 「それを見る人が多いんで、○○化粧品が広告を出したいって言って来たんだ」
 「それって男性用化粧品なんじゃない?」
 「そうさ。お前の裸の写真見る女なんているか? お前のホームページ見るのは皆男だから、そいつらを対象に広告出したいっていう訳だ」
 「へぇー。タレントみたい」
 「そうさ。お前はもうタレントなんだ。その内街を歩いているとサイン攻めに会ってうっかり外へも出られなくなるぞ」
 「本当?」
 「ああ。だってこの2ヶ月間でアクセス数は2万を突破してどんどん増え続けてるんだからな」
 「それって凄いことなの?」
 「すごいことさ。2人とも仕事なんて要らなくなるぞ。俺はお前のマネージャーで鞄持ちだ」
 「それで私は?」
 「お前はスターであこがれの星だ」
 「ふーん。私がスター?」
 「まあ。このまま上手く行けばな」
 「そうか。上手く行けばか」
 「夢があっていいだろ」
 「そうね。でも私がスターになったらどうするの?」
 「だからプロダクションでも設立して金儲けしよう」
 「違うわよ。私がスターになったらオサムは寂しいと思わないの? 私が皆のものになってしまうみたいで」
 「そうだな。だからその時こそあそこにタトゥーでもするか。俺の名前をくっきりと書いてやろう」
 「その代わりオサムにも私の名前を入れてくれる?」
 「それは痛そうだな」
 「それはそうよ」
 「やっぱりお前はスターにならなくてもいいよ」
 「タトゥーが厭だから?」
 「いや。お前は既にずっと以前から俺にとってはスターなんだ」
 「うまいこと言って」
 「本当だ。お前みたいな美人を俺が独占するのは良くないことだと思ったんだが、やっぱり愛の本質は独占だ」
 「本当かなあ」
 「ああ。スターになる夢は諦めろ」
 「そんな夢、私は初めから持ってないわよ」
 「そうか。お前は地に足が着いているな」
 「そうよ。今より上の幸せはないと思うって言ったでしょ? スターになったって今より幸せになるとは思えないし、何よりも今の幸せを失いたくないの」
 「はいはい。今のままで幸せなんだから、このまま地道に生きていよう。別にスターになる必要はないんだった」

 この後直ぐオサムは化粧品会社からの話を断り、ホームページも閉鎖してしまった。そして性器のピアスは外してしまったので1ヶ月もすると穴は塞がってしまった。代わりに臍か乳首にピアスをするつもりだったが、結局それもやめにした。臍は危ないという母親の言葉がやはり気になって出来ないのだ。又、オサムは胸を吸うのが好きなので乳首に何か付いているのは具合悪いような気がしたのである。結局ピアスというのは見かけは良いけれども胸を吸ったりセックスしたり、お漏らしや浣腸など楽しむためには邪魔なのである。見かけを重視する人にはいいが、実際のプレイの方に重きをおく人にはピアスなんか無いほうがいい。タトゥーだってそうだ。ピアスなら別の物に取り替えることは出来るがタトゥーは絵柄に飽きたからと言って取り替えることは出来ない。という訳でタトゥーもやめにしてオサムと梨花は元の二人に戻り、以前のような2人だけの厭らしい変態的な性生活を続けていくことにした。尤もそれも、梨花がどうやら妊娠したらしいということなので、いつまで続くかは分からない。結局平凡なお父さんとお母さんになってしまうのかも知れない。そして「何だかんだ言っても結婚っていいもんだ」などと言い合うようになるのかも知れない。


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