梨花-54
「それでこの旅館に決めたのは何か理由があるのか? 特別安かったとか」
「そうじゃ無いけど、ほら昔Tバックで売り出したタレントの木島愛がショーをやるのよ」
「馬鹿。お前いつからそんなおばさんになっちゃったの? 温泉のショーなんて田舎の爺ちゃん婆ちゃんが見るもんだろう。塩煎餅舐めながら」
「なんで塩煎餅舐めるの?」
「爺ちゃん婆ちゃんは歯がないから噛めなくて舐めるんだ」
「良く知ってるのね。私お爺ちゃんもお婆ちゃんもいなくて知らないから」
「そういうのは社会常識だ」
「でもね、Tバック見ればオサムも喜ぶだろうと思って此処に決めたの」
「この頃あいつTバック見せなくなったんじゃないのか?」
「そうなんだけど。でもショーなら見せるわよ、きっと。だって他に見せるもん無いもの。芸なんか何も持ってないし」
「そうだな。それじゃまあ塩煎餅舐めながらTバックでも見てくるか。人には言えないな。恥ずかしくて」
「なんで? いいじゃないの。そういう一流とは言えないようなショーを心から楽しむことが温泉旅行の醍醐味なんだと思うわ」
「あんまり若者らしい楽しみとは言えないな」
「そうだけど、本当に年とってもオサムとそうやって温泉めぐりしてたらいいなと思う」
「その頃にはお前のおっぱいも盛大に垂れてるだろうから乳首にも鈴を付けてやるか」
「そうすると歩くだけでうるさそうね」
「それじゃ温泉旅行の醍醐味っていうやつを楽しんでくるか」
「醍醐味って?」
「今お前が言ったじゃないか。木島愛の尻おっぱい見て楽しむんだ。それで、部屋に戻ったらお前の胸おっぱいに吸い付くことにする」
「私の尻おっぱいでもいいわよ」
「尻おっぱいは乳首が無いから吸うのはつまらない。見るだけでいい」
「そうか。乳首が無いと駄目なのね。やっぱりそれって赤ちやんと一緒なんじゃないの?」
「そんなこと言ってるとオケツに乳首付けちゃうぞ」
「どうやって?」
「整形して」
「そんなもの付けたらパンティが穿けなくなっちゃう」
「そんなことは無いだろう」
「だって乳首があるならブラをしなきゃいけないじゃないの」
「なる程。随分長い肩紐になるな」
「厭らしい」
「なんで?」
「ほんの冗談なのに本当に想像したりしてる」
旅館は新館だの旧館だのいろいろあって、それが全部一つに繋がっているから、とてつも無く大きな建物だった。
「凄いな、これは」
「本当ね。全部見て歩くだけで1日かかるわね」
「お前旅館の中を見て歩く奴があるか」
「そうか。人の部屋だものね」
「それにしてもこれは、一つの町みたいなもんだな」
「ねぇ。私達も浴衣に着替えてちょっと下に行ってみましょうよ」
「うん。ちょっと探訪してくるか」
「タオル持っていく?」
「それはいい。温泉は後にしてともかく見てこよう。それにしてもお前は浴衣が似合わないな」
「そうなのよ。胸が大きすぎて駄目なの」
「もっと胸を締め付けてみな」
「こう?」
「うん。まあそれでいいか」
梨花の胸は大きいので前あわせがどうしても足りなくなる。これを普通に取ると今度は丈が短くなってしまう。ぎゅうぎゅうに胸を締めてようやく何とか様になったが、そのお陰で胸房は中央寄りに余計高さを増してしまって目立つことこの上無い。しかし丈が短いよりは良いだろう。まず地下の大劇場に行ってみると、開演はまだ3時間も先なのにちらほら半分近くは埋まっている。お弁当を食べたりお菓子を食べたり自分の部屋にいるより楽しいということなのか。それとも宿泊客でなく近場から来た観客なのか。それにしてもだだ広い劇場で、サッカー場くらいありそうである。