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梨花
【その他 官能小説】

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梨花-55

 「木島愛なんてなんの芸も無いのに、こんな大劇場で何をやるのかな?」
 「だからTバック見せて踊ったり歌ったりするんじゃないの」
 「それだけで時間を潰すのは辛いな」
 「それ程見たく無い?」
 「違う、違う。 Tバック見せて踊ったり歌ったりで2時間人を惹きつけるのは大変だろうってこと。踊りも歌も素人同然だろう?」
 「そうね。だからいろいろTバック取り替えて見せるとか」
 「でもTバック取り替えても又同じ歌唄うっていう訳に行かないからな」
 「そうね。オサムみたいな観客ばっかりじゃないものね」
 「それはどういう意味だ?」
 「オサムはどうせ歌なんか聴きやしないでしょ」
 「失礼な。でも木島愛は歌手じゃ無いからな」
 「ただのバラドルだものね」
 「なんだ? バラドルって」
 「バラエティ・アイドル」
 「バラエティ・アイドル?」
 「うん、特にこれといった芸が無いんでバラエティ番組に華を添える為のアイドル」
 「なる程。時代がそういう種類のタレントを要求するんだな」
 「そう。バラエティ番組が多いから」
 「すると此処でもバラエティをやるのかな?」
 「まさか。1人じゃ出来ないわよ」
 「そうだな」
 「どうする?」
 「何が?」
 「早いとこ席取っておかないと前の方は無くなりそうじゃない。もう座る?」
 「阿呆な。ストリップじゃないんだから別にかぶりつきじゃなくたっていい。もうちょっと別の所見てみよう」
 
 「凄い沢山あるのねえ、お土産って」
 「ああ。だけど同じような物ばかりだな。温泉のお土産なんて日本中どこへ行っても似たり寄ったりだ」
 「ねえ。なんか買おう」
 「ああ。でも夫婦何とかはもういいぞ」
 「うん。なんか面白そうな物ある?」
 「あれなんかどうだ」
 「どれ?」
 「あのデカイ鈴。あれをあそこのチェーンにくくりつけたらいいお土産になるぞ」
 「厭だ。あんなのぶら下げたら重くて歩けないでしょ」
 一角に鈴が沢山置いてあり、1番大きいのは人の頭ほどもある。鈴の横腹に別府温泉と書いてあるだけで別府温泉に何故鈴なのか分からない。しかし温泉のお土産なんて大体そんなものである。オサムはニヤニヤしながら4〜5センチくらいの大きさの鈴を買い求めた。
 「絶対買うと思った」
 「面白いだろ。想像しただけでおつゆが出てきた」
 「おつゆって何?」
 「はい。チンポの涙です」
 「チンポの涙はいいわね」
 「な? 俺は表現にバラエティがあるんだ。お前も人真似ばかりしないで考えろ」
 「それじゃ、マンコの涎」
 「汚いな。汚いんだよ、お前の言うことは」
 「ねえ。もっと記念になる物買おう」
 「これは記念になるぞ」
 「人に見せてあげられる物」
 「別に人に見せてもいいじゃないか。これだけ見せれば厭らしくもなんともない」
 「それでも厭。どうせ後で私に付けさせるでしょ? そんな物人に見せられない」
 「だから見せる時は外して見せればいいんじゃないか」
 「それでも厭よ」
 「どうして?」
 「どうしても」
 「何で?」
 「言葉を変えて同じ質問するんじゃないの」
 「またやられた」
 梨花は旅館の全景が描かれたタペストリーを買った。部屋に貼っておけば誰でも質問してくるからそれをきっかけに旅行の話が出来るからだという。
 「デカイ鈴を買って貰った話とか?」
 「それはしないの」
 「どうして? あそこに付けたんだよって言わなきゃいいじゃないか」
 「オサムもしつこいわね。悪趣味よ」
 「はいはい。ではそろそろTバックを拝みに行くか」

 オサム達が陣取った席は遙か後ろで双眼鏡でも無ければ見えそうにない。木島愛は司会者なのかコメディアンなのか分からないような若い男と掛け合いで芸能界の裏話をした外は下手な歌を2曲歌っただけで、結局Tバックは見せなかった。尤もオサム達は途中で出てきたから最後にサービスして見せたのかも知れないが、面白くないので我慢出来ずに出てきてしまった。


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