梨花-51
「どう?」
「うん、痛くなかったか?」
「ちょっとネ。大したこと無かった」
「そうかそれは良かった」
「どこ行ってたの? そっちの部屋にいないから看護婦さんが探してたのよ」
「お前の悲鳴なんか聞きたく無いから外に出てた」
「悲鳴なんか上げないわよ」
「そうか。でもそれいいな、実にいい」
「ほんと?」
「うん、やって良かった」
「良かった。オサムがそんなに喜んでくれるならもっと早くやれば良かった」
「音はするか?」
「するわよ。ほら」
梨花は両腕でちょっと体を浮かして腰を揺すった。チリンチリンと軽やかないい音である。 痛みが酷いようならいつでも電話して来て下さいという。抗生物質を出す関係で提携している医者を呼んでおくからと言われた。やっぱりこいつは医者では無いんだ。大体医者が耳や鼻にピアスなんか付けてる訳がない。だからあの女も看護婦の格好はしてるけど多分看護婦では無いのだろう。男が顔に沢山ピアスしていたし、こんな所で働いているくらいだからあの白い服着た女はユニフォームの下にきっと無数のピアスを付けてるんじゃないだろうか。ラビアなんか左右に4つずつくらいリングを付けてクリトリスにもでかいリングかバーを刺し、臍にも乳首にもピアスをして・・・きっと体中ブラブラいろいろぶら下げているのだろう。それはそれで面白いけれどもちょっとやり過ぎなんじゃないか、などと見てもいないのに勝手に想像は先走る。
2〜3日は締め付けない程度の下着を穿いて鈴を支えていた方がいいと言われたので、帰りに早速コンビニで下着を買い、そこのトイレを借りて穿いた。ピアスをするというので下着は穿いて来なかったし、梨花が持っている下着は皆ピッタリと食い込むくらいに小さな物ばかりだからである。街中は意外に騒音が多い上、付けたばかりでまだ痛いからどうしてもそろそろと揺れないように歩くので鈴の音は案外聞こえない。むしろ下着を穿いてからの方が揺れに伴う痛みが無いので普通に歩くことが出来、コトコト籠もった音が聞こえるようになった。
「まあ、クリスマスのトナカイじゃないんだから、そんなに派手に鳴ったらおかしいもんな。この程度でいいかも知れん。どっか静かな所に行けば結構聞こえるだろうし」
「うん、私にはとても大きく聞こえるわ。やっぱり気にしてるからかな」
「そうだろう」
「なんか、こんな所に鈴をぶら下げてるなんて考えただけで厭らしい感じがするわね」
「そうそう、それがいいんだ。今度また姉さん達と温泉でも行って来い」
「それでタオルで隠すの?」
「いいや、もう今更遅い。俺はどうせもう悪趣味だと思われてるんだから今度は堂々と見せてやれ。これを付けてると狂うような激しいセックスになりますとでも言ってやれ」
「それでお姉さん達も皆鈴付けると面白いわね」
「馬鹿。こういう阿呆なことに金掛けるのは俺達みたいな変人だけだ」
「ねえ、お臍はいつやるの?」
「臍は鈴の様子を見てから」
「どうして?」
「臍っていうのは内臓に近いから危ないんだ」
「そうなの?」
「臍っていうのはお母さんのお腹の中にいるとき、そこから栄養が送られて入ってくる入り口なんだ」
「それくらい知ってるわよ」
「だからな、そこからばい菌が入ると全身に廻ってコロッと行っちゃうんだ」
「ほんと?」
「ああ」
「誰かそういう人がいたの?」
「いや、お袋が言ってた」
「お母さんが?」
「ああ。俺が子供の時に臍ばっかりいじってたらそこからばい菌が入ってコロッと死んじゃうからやめなさいって」
「へえ、それ本当かしら」
「なんで? 俺が作り話してると思うのか?」
「違う違う。お母さんが言ったのは本当でしょうけど、変な癖を止めさせる為に大げさに言っただけじゃ無いの?」
「いいや。いかにもありそうなことじゃないか」
「そうかしら?」
「ああ」