片山未来（２５）その２-4
「亮介が……忙しいみたいだから、邪魔しちゃいけないなって思って。でも身体がうずうずして、我慢出来なくなっちゃって……木俣くんとエッチしちゃったの。そしたら……」
そもそもは、未来の住むマンションに清掃仕事で入っていた木俣が、元彼を引っ張り込んでいた現場を激写したのがきっかけだった。
全く同じことが、今度は木俣を被写体として繰り返されたのだ。
短期のバイトだったため、木俣は既に辞めている。
しかし木俣の後釜である掃除人、五十代くらいの薄ら禿げたおっさんというのが、
「前にここ掃除してたあんちゃんとデキてんだろ？ 証拠写真撮っちまったんだよ。俺もあんたみたいなピチピチした若奥さんとしっぽり楽しみてえんだけどなあ」
肉体を求めて脅迫してきたというのだ。
「油断しすぎだろ……未来も木俣も」
俺が未来とヤるのに家まで押しかけたのは、一度目だけだ。ギリキリの差で旦那の帰宅に鉢合わせしそうになったリスキーな経験を踏まえ、それからは外で会うようにしていた。
初めて未来を自宅に迎え入れた。
ただし、エロい行為抜きで深刻な相談である。
薄ら禿の脅迫者には、必ず要求を呑むと答えて、日程を取り決めたという。
「その場でヤラなかったの？」
「ヤダよ……あんな人と」
「木俣のときとは随分違うな。あいつの場合、即ハメだったんだろ？」
「そ、それは……強引に押し込んできたし。そうじゃなかったら同じように先延ばしして、考える時間作ったわよ」
言い訳臭い口ぶりだった。
木俣の奴は、それなりに小ざっぱりしたイケメンの部類だ。未来も迫られて少々ときめいたのかもしれない。
第二、いや俺を含めるならば第三の脅迫者にあた顔も知らないるおっさんに、俺はささやかな憐れみを感じた。
「ヤラせてあげればいいんじゃないの。未来も相手が増えて嬉しいだろ」
意地の悪いことを言って俺は煙草をくゆらせた。
「もうヤダよ……亮介くんや木俣くんは、ほんとに悪いことしないの分かるけど、その人、どんなことしてくるか……」
心底から恐怖を感じているらしく、未来は話しながら自身の肩を抱いて身震いした。