私の彼の青い傘-1
雨。傘。私は傘が大好きだ。
…それは何故か?
大好きな彼と手を繋げるから。
……晴れの日でも良いじゃないか、と、思う人もいるだろう。
確かに晴れの日でもいい。だが、雨の日の方が、彼の手の温もりを直接感じられる。直射日光も、木漏れ日も、彼の温もりを邪魔しない。
彼の透き通るような蒼い傘。私の不透明な漆黒の傘。相対であるからこそ、釣り合っているかも知れない。
「恭一……」
「何??小夜?」
「私…幸せ♪」
「……俺も幸せ♪」
私と恭一が知り合ったのは6月25日。雨が降っていた。
私は4年付き添った彼と別れたばかりだった。ショックで死にたかった。そんな私に手を差し延べてくれたのが彼。
「なんでッッ…何でなの…?」
雨が降っている街。道端に屈み込み泣きじゃくる私。
「そんな所で寝てたら風邪ひくぞ?」
「え?」
ふっ…と現れた青い空−−ではなく彼の青い傘。
「まぁ、とりあえず俺ん家来いよ。コーヒー出すし、シャワー貸すぞ?」
すっと手を差し延べる彼。触れた瞬間、太陽のような温かさが私の手を伝って体に流れ込む。
「……わかった……。」
なぜOKを出したのかは覚えていない。何故か、彼は信用出来ると思った。
「で、何があったのさ?話せたらでいいから、話してくれないかな?」
私は全てを打ち明けた。
元彼と過ごした時間が人生で一番楽しかったこと。
元彼と体を重ねたこともあること。
結婚のことも話し合ったことがあること。
そんなに信頼していた彼が、二股をかけていたこと。
そして最終的に……捨てられたこと。
「ほぉ…酷いな……可哀相に…苦しかったろ?泣いていいんだよ?」
その一言が彼の口から零れた瞬間、私をせき止めていたものが、吹っ切れた。
「ッッ……!!」
「うぉ〜。よしよし。」
「これから何回でも来てくれていいからね?いつでも話聞いてあげるから。」
「うん…ありがと。」
「あ。外雨降ってるからさ、ホレ、傘。」
そういって彼は、黒い傘を手渡した。
「ん…。なんかゴメンね…。」
「いいのいいの♪♪気ぃ付けてて帰れよ!」
「……またね。」