プールのあとで-2
アパートに着いて、少し休憩などと横になったら、ポリアンナは眠ってしまった。自宅のような気安さと、疲れと満腹感とに、熟睡のご様子である。
「眠れる森の美女だ。女の子の寝姿っていいなあ。」
俺は一人でアイスコーヒーを淹れると、卓袱台にあった本を手に取った。萩原朔太郎の評伝だった。
神経質で、人見知りなのに加え、二十代後半まで何度も落第・転校ばかりしていた朔太郎に俺はシンパシーを感じていた。無職の変人とさえ思われていた男が、後には「口語自由詩の完成者」と呼ばれる。
一体、俺に向いた仕事ってなんなのだろう。世間で働いている人たちは、どういう気持ちで仕事をしているのだろうか。電車の中にいるスーツ姿のサラリーマンは、みなダサく見える。真夏に暑苦しいスーツ。それもみんな同じような色調。髪にてかてか油を付けているオヤジが沢山いる。自分で気持ち悪くないのかと思う。ああいうのがカッコよく感じられる世界なのか。でも日本はああいう人たちのお蔭で成り立っているのだ。
渡部が目指す大学院にも興味が無いではないが、研究は大変な上につまらなそうだ。かと言って、朔太郎のような試作の才能もない。
変身した俺にできること。飛ぶ、覗き見する、バリヤー?、ステルス機能。就職には役に立たないばかりか、見られるのも問題があるし、下手に変身したら、本職の奴らに目をつけられるに違いない。空を自由に飛んだら爽快なのだろうが、自衛隊に迎撃されそうで怖い。
本を読むには暑過ぎた。ポリアンナは額に汗を浮かべている。扇風機を向けてやろうかと思ったが、どうせセックスする予定なのだから、服を脱がしてしまおうと考えた。
「ディズニーから、川端の『眠れる美女』に変更。」
自分も興奮するため裸になった。
下半身から脱がす方が目に快い。スカートは外すのが簡単だ。パンツもするりと脱げた。あらかじめポリアンナの許可を取ってあった俺は、写真を撮ることにした。この時点で川端からも逸脱した。
横たわる下半身裸の全身を上から。膝を立てさせたその脚の間から。湿ったお尻の穴のアップ。プールで綺麗になっている筈なのに、嗅いでみたらもうにおう。割れ目から襞の飛び出たようす。襞の外側の付け根がポリアンナはいつも汚い。そして、襞の内側。おしっこのにおいが鼻まで届く。膣はきれいに閉じていて、でこぼこした紅い肉しか見えない。クリトリスも、剥きあげると大抵汚れている。おしっこの穴を見つけ出してアップ。お尻の肉を斜め下に引くと膣が開く。
どこも魅力的だ。きりがない。
上半身を脱がすのは一苦労だった。スポーツブラを捲り上げたら、小ぶりのおっぱいが顔を出した。肌が白いから、胸の辺りにはそばかすが多い。
全裸のポリアンナをまるごと目にするのは初めてだ。バレエを習ってできた体形は、ただでさえ脚が長くて美しい体つきを、一層芸術的なものに仕上げている。生え始めの腋毛と、臍とを接写する。
この子は今、俺のものなのだ。内股から匂い立つ汗に混じったポリアンナの体臭を吸い込むと、歓びが心に溢れかえった。
「ああ」
俺は変身していた。その状態で勃起もしている。
「寝ているし、まあ、このままでいいか。」
俺は、閉じていた膣に外骨格の硬いペニスを差し込んだ。
「あ、うん」
眉間に皺を寄せたがポリアンナは目覚めなかった。濡れていたからだろうか。
一息に腰で突き抜いた。
「ううっ?!」
突然、ポリアンナが目を開けて俺を見た。信じられないという表情を見せてすぐ、激痛に歪む顔になった。
「あああああああ!」
忘れていたのは、俺の長さと形が人間のそれで無くなっていた点だった。記憶では、長さは二十センチを超えるし、五センチほどの太さがあった。大体、形からして違う。それが根元まで入っている。中では更に奥まで伸びていく感があった。しかし、ポリアンナは大きな声を上げた。
「死んじゃう! 気持ちいい!」
息に合わせてゆっくり腰を上下させてきた。魚のように口を開閉している。快感に溺れているのだ。
「うっ!」
吸い出されるように俺も射精した。量がずいぶん多かった。ポリアンナは気を失った。
ふと、俺は蜂同様に毒を刺したのではないかと思った。本当に死ぬんじゃなかろうか。俺は差し込んだ状態のまま元に戻った。短くなった俺のものはつるりと抜けて出たのに、あれだけの量の精液が穴から漏れてこない。
「ポリアンナ、ポリアンナ!」
頬を叩いてみたが起きなかった。下腹が膨らんでいる。子宮だろうか。
やがてアレルギーのようにポリアンナの体じゅうは真っ赤になった。それの収まりと共に、どこかの民族がする入れ墨に似た模様が全身に現れた。