1月:出会い-4
小川くんは急に静かになって
「どうしたの?」
「宮本さん、笑ってるから」
「うん。楽しい話だったから」
「今の笑い、その笑いじゃないよね?」
小川くんは少し困ったように無理やり笑顔を作った。
「俺、1人で話して空気読んでない?」
ビールをグッと煽って、一瞬の間を作った。
「え?あ。違う違う」
「・・・・」
「女の子慣れしてて、研究職っぽくないな、と思ったのよ」
「・・・・」
「大学時代は結構遊んだ方?」
からかってやろうと笑いながらそう言えば
照れるでもなく、茶化すでもなくホッとしていた。
「あぁ、良かった。宮本さんにはそう見えたんだ」
「え?」
「全く女の子慣れなんかしてないよ」
「そう?」
「うん。理学部なんかほぼ男子校だったし。
退屈して『帰る』って言われないように必死に話してた」
「・・・そう」
なんだ・・・そうだったんだ。
自分のために必死になるオトコが少し可愛く思えた。
少しホッとしている自分がいて。
「楽しいわよ」
うん。確かに楽しい。