特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.1-4
沈黙が部屋を包み込む。静かで暗くて、加えてこの空気の重さ。
三人は固まってしまった様に動けない。時計の秒針がうるさく聞こえる。
「あのね」
その沈黙を破ったのは飛鳥だった。
レポート用紙を握っていた手は未だに震えている。
「課題、やろうよ」
絞り出す様な声。いつもの猥談とは違う雰囲気に、二人は少なからず驚いた。
しかし当の飛鳥は、踏み出した一歩に後戻りしない様に、Yシャツの釦を上から順番に外していく。
Yシャツの間からチラチラとブラジャーが見え隠れする。全部外し終わると、Yシャツを脱がずに羽織ったままスカートに手を掛けた。
息を飲み、唖然と見詰める二人を余所に、立上がってスカートのチャックを下ろしてホックを外す。
ストンッとスカートが滑り落ちた。床に落ちたスカートは、足下を囲む様に円を描いている。
立上がった状態で二人を見下ろす。そして…
「ね…キスしよ…」
日立の目の前で膝立ちになり、草野を呼んだ。
二人はされるがままにお互いの頬をくっつけて、唇の端と端を繋げた。男同士でキスをする一秒前…いや、軽くしている状態だ。
「え?あっ、飛鳥ッ」
「なっ、やめろって」
男同士のキスまがいの行為に慌てて身を引こうとするが、白くて細い指が二人の頬を押さえているので抵抗が出来ない。
加えて、目の前に実っている、サクランボの様な唇や、シャツの間から見える滑らかなデコルテ、上から見下ろす事で胸の形がはっきり見え、二人は初めて見る飛鳥の色っぽい身体から視線が外せないのだ。
その端と端が繋がった二人の唇に、飛鳥のサクランボの様に艶のある小さな唇が重なった。
触れるだけのキス、だった。
本当に、一秒も待たずに飛鳥は飛び退いてしまったのだ。顔を真っ赤にほてらせ、また飛鳥は俯いてしまう。
顔をくっつけたままの二人は、視線を合わせて失笑を漏らした。
「わ、笑うなっ。初めてなんだから、仕方ないじゃん…」
ちょっと気弱なセリフに二人は目を丸くする。セックスの経験が無いのは知っていたが、まさかキスもした事が無かったとは知らなかったのだ。
「つまり…ファーストキス?」
こくん、と首を縦に振る。
「二人にあげたかったから…」
耳の付根まで紅くして、消え入りそうな、か細い声で呟いた。そんないつもと正反対の可愛らしい仕草に、二人は自分の飛鳥に対する「好き」を開放してしまった。
「飛鳥、好きだ」
草野が耳元で囁くと、負けじと日立は飛鳥のまぶたにキスをして
「大好きだ」
と、愛の言葉を囁いた。
そして何時しか、あのぷっくりと甘いサクランボに、二人の唇が代わる代わる重なるのだった。