特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.1-3
「んで、課題。いきなりだけど見せ合おうぜ」
3人は締め切ったカーテンの青い光の中で、向かい合って床に座った。
聞こえるのはお互いの呼吸音とクーラーの機械音のみ。
日立は自分から言い出したので、鞄から例のレポート用紙を取り出し、3人で囲んでいる真ん中のスペースに、ためらう事無く置いた。
『課題:一日で何回、女性の身体で射精が出来るか調べよ』
会議室では流石に見せ合う勇気は無かったが、気のおけない仲間同士。…と言うか、3人合わせば文殊の知恵。何とか成るだろうと踏んだのだ。
同じく考えていたのだろう。続けて草野も、課題を真ん中のスペースに潔く置いた。
『課題:女性の神秘を探れ。三つの穴から伝わる快感を比較せよ』
息を飲む飛鳥。…つまり、って……
ちらっと二人の顔を見上げるが、何の反応も無い。
「わ、私が、相手をする…の、かな?」
声を絞り出し、言葉を紡ぐ。冷たい汗が背中を伝う。見詰める先の二人は……黙って見ている。
飛鳥は握り締めているレポート用紙を震わせた。
皺の寄った用紙はまだ、真ん中のスペースに置けないままだ。
飛鳥は思う。自分だって、この二人のどちらかに相手になってもらわなければ課題を済ませられない。
見詰める先…四つの瞳が飛鳥を凝視している。
潤んだ瞳。
薄く開いた唇。
高揚する頬。
今の飛鳥は、男勝りで野球ボールを追いかけているなんて想像がつかない程、艶めいている。
「俺…後でもなんとかなるから、さ。その……、こう言う機会なんだ。やっちまえよ」
草野が沈黙を破り、言葉を吐き出した。
ポーカーフェイスだから平気そうに見えるが、内心、草野は諦めている。
日立と飛鳥は同じ野球部の部長とマネージャーだ。自分の入る隙間が無いと、いつも感じているのだ。
(…飛鳥は日立が好きなんだよな)
自分の中に在る淡い恋心に蓋をして、草野は膝に手を掛けて腰を上げた。
「待てよ。俺こそこんな課題だ。…何とか出来るし。お前、折角バイト休んだんだ。済ませちゃえよ」
立ち上がろうとする草野を制して、日立が前にでる。
日立も草野には敵わない思いがある。
何でも器用にこなす草野に、不器用な野球馬鹿では比べ物にならない。
(飛鳥が追いかけるのは、いつもお前だけ…。飛鳥はきっと…)
「いや、お前が…」
「お前が先に…」
「先に言い出したのはお前だろ…」
そんな言い合いが続き、短気な日立はイライラして核心に触れてしまった。
「お前、飛鳥が好きなんだろ」
日立が鋭いまなざしで草野を射る。さっきまでの言い合いなんかとは比べられない程の迫力だ。
「お前だって、飛鳥が好きなんだろ」
草野も負けじと睨みつける。さすがに野球馬鹿の迫力には劣るが、負けずに睨んだ。
そんな様子を目の当たりにして、飛鳥は唇を噛む。
(どっちが好きか…なんて、考えた事はあるけど…結論なんていつも導けない。だって、どっちも好きだから。3人でいる時が心地良いから)
自分の二人への想いが不純で、我が儘で…恥ずかしいとしか言い様が無い。
二人から好意を寄せられて、こんなに嬉しい筈なのに素直に喜べない。