ン-6
「中村さんちょっと来て」
エントランスの真ん中で穏やかではない雰囲気で話す私たちは
にわかに注目を浴びていて
遠巻きに私たちを見る人たちから私を守るように
岡本主任は私の手を取って、歩きだす。
「岡本主任、第1会議室使用可能です」
後ろから柳下くんがそう小さく声をかけてくれた。
その言葉に、岡本主任は苦笑いして
私の手をつかんでいる反対の手を軽く上げて
柳下くんに感謝の意味を示した。
第1会議室はめったに使われない会議室で
その階はひっそりとしていた。
会議室に入るなり、鍵を閉めてソファーに向かい合って座る。
「結婚前提の合コンって、どーゆー意味だよ」
静かに話しだしたその声は、自分の怒りを抑え込もうと必死になっているのが分かる口調で
岡本主任は大きくため息を1つついた。
「・・・」
「答えろよ。答える義務があると思うけど?」
「・・・・」
「なに?俺をもてあそんでんの?」
もてあそんでるって・・・
「なに?」
「もてあそんでるのは、そっちでしょう?」
「は?」
「私と結婚するつもりなんかないくせに!」