『茜色の空に、side:秦一』-4
「明香さん、可愛い。」
唇を少しだけ離し、思った事を口に出す。
「・・・。しんちゃん、酔ってる・・?」
上気した顔でか細く囁く明香さん。瞳が少し潤んで、何とも言えず色っぽかった。
そんな顔で見つめられたら理性を押さえられそうにないんですけど。
ソファに座る明香さんの手を引いて、僕の座るベッドに座らせる。
そして、もう一度口づける。
僕の4年半の想いを明香さんに流し込む様に、深く。
明香さんの細い背中に腕を伸ばし、きつく、でも壊さない様に抱き締めた。
「ふ・・んん・・。」
苦しそうな切なそうな、甘い吐息。
もう。駄目だ。やばい。
気が付いたら明香さんの体をベッドに押し倒していた。
腕を僕の胸に押しやり抵抗する明香さん。
「・・・嫌?」
我ながら意地悪い言い方だ。
「い、嫌ってゆうか・・。シャ、シャワー借りてもいい?」
断られてない。嬉しい。
バスルームに入る明香さんを見送り、クローゼットに納めてあったバスローブを洗面所に置いておいてあげる。
・・・。そうだ。
僕は急いで、でも大きな音を立てない様にそっと、鍵と財布を手にして部屋を出る。
小さくガチャリ、と部屋のドアにオートロックが掛かる音を確認して、猛ダッシュでエレベーターに向かい、1階に降りる。
向かったのは先程明香さんとお酒やつまみを買ったコンビニ。
小さな箱を手に取りレジに。いつもならこんなのをコンビニで買うなんて
恥ずかしくって考えられないが、今はそんな事より嬉しい気持ちの方が勝っている。
高校生か。と自分にツッコミながら、又急いで部屋に戻る。
明香さんはまだシャワーを浴びている様だ。良かった。
ついさっき迄明香さんが座っていたソファに腰を掛ける。
まだ手の付けられていない缶ビールを開けて飲む。
半分程あけたところで、明香さんがバスローブを羽織って出て来た。
その姿に思わずドキドキしてしまう。
僕も入る様に勧められ、ソファを立ち上がる。
何故だか急に不安になり、明香さんに歩み寄ると、軽く抱き締め、まだ少し濡れた髪に唇を軽く押し当て、
「明香さん・・。帰らないでね?」
と、お願いしてしまう。
何か今日の僕は優しい明香さんにつけ込んでいる様で、情けない気分だ。
でもこんな夜中に一人で帰られても大変だ。明香さんが嫌だとしても、取り敢えずここに居て待って貰わないと。
明香さんが小さく頷くのを確認して、僕も浴室に向い、簡単にシャワーを浴びる。
僕もバスローブを羽織り、浴室を出ると、明香さんはソファに座り、小さく開けたカーテンから夜景を眺めていた。
僕に気付くと、カーテンを閉める。