妻のデート (2) 抗えない身体-1
「……パパのバカ……」
鼻声のゆきに突然ののしられる。
「変態……」
こちらを振り返る妻。
尻肉の間にはまだ私のペニスが挟まっている。
「悩んで泣いてる奥さんに発情するなんて酷い……」
目の周りを赤くした妻が口をとがらせて私を睨んでいる。
真剣に怒っている風でもあるが、しかし深刻になりすぎないようにという揺れも感じられる。
「ごめん。俺もそう思った」
バカ正直な謝罪にゆきが笑う。帰宅してから私に見せたはじめての笑顔。
「ゆきが悩む気持ちはすごくわかるから受け止めなきゃって思ってたのに。あまりに色っぽくてつい」
「もう……」
ただ、いくら変態の私だってタッチしたときにゆきが息を荒くし尻をくねくねしなければ思いとどまったはずだ。
「でも私が今日したこと、呆れてるでしょ?」
「全然呆れてないよ」
「嫌いになったでしょ?」
「なってない」
「なって!」
「なれない。もっと好きなった」
目の前の柔らかそうな唇にキスしようとするが、またぷいと後ろを向かれてしまった。
「こんなに酷い奥さんのこと愛さないで……」
「無理だよ。今でも大好きだし愛してる」
「そんなに好きなら……じゃあ今のこの私の気持ち、どうにかして」
少し笑顔が戻ったくらいで吹き飛ぶ悩みではないようだ。当たり前だ。
今度こそ発情せずに向き合わなければならない。覚悟を決める。
今まで言わずに済むなら済ませたいと思っていた言葉を口にする。
「Zと遊ぶの、もうやめようか」
根本的にはこれしかない。これもまた当たり前の話である。
「……」
「これまで無理を承知でお願いしてきたけど、負担になるのをわかってて続けるのはよくない」
「……ありがとう……」
張り詰めた「ありがとう」だが、背中越しに安堵の気持ちが伝わってくるような気がした。
「パパのその言葉、待ってたのかも」
「……そっか」
「……今までこんなの普通じゃないしやめたいっていう思いと、でもみんな楽しんでるし誰にも迷惑かけてないしいいのかなっていう気持ちが、交互に浮かんだり消えたりしてたの」
迷う気持ちは痛いほどわかる。人妻としてごく普通の感覚だと思う。
「だからパパから言ってくれてほっとした」