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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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妻のデート (2) 抗えない身体-2

私の手のひらを触りはじめたゆき。
手のシワでもなぞっているのか、くすぐったい。

「あんな涙見せられて、まだ続けるなんてできないよ」
「もうやめようって迷わず言い切ったパパ、格好良かったよ」
「妻を泣かせて格好良いもなにもないけどね」
「ひとつ聞いていい?」
「いいよ」
「このあとZくんに誘われることもあると思うの」
「うん」

もちろん私はZに貸し出しはもう終わりだと告げるが、彼がこっそり連絡をとってくる可能性はある。
たしかにZは意外と義理堅いし、だからこそ貸し出しの話をもちかけたのだが、根は人妻と遊ぶのが大好きな男である。
積極的に連絡してくるほど女に飢えてはいないかもしれないが、モノの弾みということもある。どこかでばったり再会し、挨拶代わりにホテルに誘うくらいのことは、彼なら嫌味なくできるだろう。容易にその絵が頭に浮かぶ。問題は女の側が誘いに乗るかどうかだけなのだ。
Zは断られても後腐れなく笑って済ませ、乗ってくればやはり後腐れなく据え膳を喰らう。モテる男というのは悔しいがいつも余裕があるし、女はそういう男にこそ「この人となら面倒なことにはならなさそう」と安心して誘いを受けることができる。

「それでもし、今日みたいに私がこっそりデートしてきちゃったらどうする?」
それは――。
「それは、ゆきが誘いに乗っちゃうってことだよね?」
「質問してるのは私のほうだよ?」

そうなのだ。
ゆきは誘いに乗るかもしれない――。
この火遊びをはじめたときから、実は、そのことは覚悟していた。

断る理由がないのだ。

イケメンの細マッチョでセックスも上手い。性格もよく会話も楽しい。遊び人だが、遊び人なりの誠意をもって女性を扱うことができる。しつこくつきまとわず、その場限りのきれいな関係で終わる。
おまけに身体の相性がいいことはもうわかりきっている。夫には絶対に望めない「物理的な刺激」を女性器と子宮全体で味わえる。オナニーでも得られない荒々しい猛りと温もりを、身体の一番奥で感じることができる。経験した女にしかわからない「支配される女の歓び」を、ゆきはもう経験してしまっている。

夫にバレることもない。簡単なことだ。今日のように報告しなければそれでいい。
Zから私に伝わる心配もまずないだろう。彼にとってそれは、私とゆき両方を裏切る最悪の選択肢になるからだ。そのくらいの損得勘定はできる男だ。

だからゆきには、Zの誘いを断る理由がない。否、誘いを受ける理由しかない。
強いて言えば理性だけが頼りだが、今日はその理性が負けた。
夫の禁止はブレーキになるだろうか。
今日のメッセージのようにプレイの一貫ともとれる弱い禁止ではなく、今ここではっきりと「ダメだ。許さない」と言ったら?

わからない。
ゆきもその答えはわからないだろう。
わからないということが、今日わかってしまった。だから涙が出た。

「ゆきがZとデートしてきたら……それは俺自身が撒いた種だし、こんなこと言う資格ないかもしれないけど」
「……」
「浮気はダメだよ。普通の夫婦はそんなことしないからね? もししちゃったら当然怒るよ」
「……よかった。そう言ってくれて」

これでいいのだ。

「私たち普通の夫婦に戻るんだね」
「普通の夫婦じゃないよ。普通のラブラブ夫婦だよ」
「エッチも昔みたいに普通に戻っちゃう?」
ゆきは気を遣って「普通のエッチ」と言ってくれているが、昔の私のセックスは淡白もいいところだった。前戯もなしに慌ただしく挿入して数分で終わり。
「戻っちゃったらどうするの?」
「Zくんと浮気しちゃう」

私をからかうように笑うゆき。ようやく本当の笑顔を見せてくれた。


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