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痴漢専用車両へようこそ
【痴漢/痴女 官能小説】

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スイートルームの宴-7

(もう、由香里先生ったら)

由香里の思い込みの強さに悠子は呆れた。

「待ちなさい!由香里先生、いいえ由香里さん。たまには教師の殻を脱いで人の言葉に耳を傾けなさい。今の由香里さんは貴女の嫌いな学年主任と同じになってるよ」

悠子は頑な由香里に手っ取り早く揺さぶりをかける事にした。

「ど、どういう意味ですか?」

自己中心的で一般常識に欠ける学年主任を由香里は毛嫌いしていた。その学年主任を引き合いに出された由香里の目に険が走った。

「由香里さんも気づいてると思うけど、教師という人種は自身の考えを他者に覆されるのを極端に嫌う傾向にあるの。普段の由香里さんはそうでもないけど、今の由香里さんは人の話を受け付けない学年主任みたいよ」

教師という人種は社会に出た途端、【先生】と呼ばれて敬われる立場となる。人生経験や社会経験のないまま疑問なくそれを受け入れ、閉鎖的な社会で過ごせば、得てして一般常識に欠けた自己中心的な人物に成長する傾向にある。

こうして閉鎖的な社会でできあがった【教師】は、学校関係以外の事柄に於いても、世間では荒唐無稽な考えをも押し通しがちになる。一般常識に照らし合わせてその異常さを指摘すれば、自身の考えを糺す事なく、反対に逆上する事さえままある。これは小学生よりも中学生、さらに高校生と、教え子の対象年齢が上がるに連れて、不思議とその状態が酷くなる。

もちろん個人差はあるが、悠子が示した学年主任はそれが顕著に現れていた。

自身の異常な淫乱さを自覚する由香里故に、それ以外の事では規範となる姿勢を保っていたかった。それで人格のバランスを取っていた由香里が、学年主任と同じと揶揄される事などもっての他だった。

「そ、そんなことありません」

「ほら、そこよ。あたしの助言を受け付けないでしょ。幽体のあたしにはどう繕っても意味ないからね。(あ〜あ、嫌われちゃうなあ…)」

絞り出した由香里の否定の言葉を、悠子は心を鬼にして指摘した。

「ううっ…」

自身の心の支えだった教師の矜持まで否定された由香里は、顔を被って泣くしかなかった。

突然、悠子は悪寒を感じてゾクリとした。悪寒の元を探ると、案の定、宮本が悠子を睨みつけていた。

(なんて、損な役目なのかしら…)

悠子は心の中で嘆いた。

「もういいでしょう」

泣き崩れる由香里を庇うように、宮本が由香里の肩を抱いた。宮本の手のひらの体温を感じて由香里の肩がピクリと動いた。

始めは成り行きをオロオロと見守っていた宮本だったが、やはり由香里にとってのヒーローだった。

「信じて貰えないのはオレに真剣さが足らないからですよ。これ以上、由香里先生、いや、由香里さんを責めるのはやめて貰えませんか」

「あら、わかってるじゃないの。だったら真剣に告白しなさいよ」

悠子は皮肉な笑みを浮かべて言った。それは悠子にとって生涯で初めての厭な微笑み方だった。

(ひぇ〜、悠子さんの悪役、めちゃくちゃ怖いんですけどぉ− −もう、優子ちゃんたら酷いじゃない。ホントは凄く優しいのに…。もうっ、星司くんまで引く事ないでしょ!)

宮本には2人の心の中のやり取りは伝えていない。

「心配されなくてもわかってますよ」

悠子の言葉に対して、宮本なりに返した。

「由香里さん、顔を上げてください」

由香里の肩を掴んだ宮本の手に力が入った。少し痛みを覚える力加減に、由香里はビクリと震えて顔を上げた。

情けない泣き顔を見られたくは無かったが、宮本の真っ直ぐな目から、視線を背ける事ができなかった。

「由香里さん、オレは本気です。オレ…、いや、私と結婚してください」

悠子は宮本の想いを由香里の心に直接中継しようとしたが、宮本の目を見て余計な手出しをやめる事にした。 



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