亜紀-18
「だから説明してよ」
「それが気が重い」
「どうして?」
「まあこれしか無いんだろうなと思うんだが、余計泥沼に足を突っ込むことになりそうで」
「どんなこと? ねえ、聞かせて」
「君を僕の婚約者だということにして、寄付は免除願いたいと正面から頼んでみたらいいんじゃないかと考えたんだが・・・」
「あらあ、それは確かに妙案だわ。だって私が婚約者だということはあの九の一も知っているんですもの」
「婚約者だと誤解しているっていう意味だろ」
「婚約なら本当にしてもいいわ」
「馬鹿を言うな。それが泥沼だと言ったんだ」
「いいじゃない。だって本当に婚約したって後で解消すればなんということ無いじゃない」
「僕が泥沼だと言ったのはもう1つある。あの九の一に頼み事するのは何か悪いことが起きそうな予感がするんだ」
「そんなの考え過ぎよ。奥さんが亡くなってから女っ気無しで過ごしてきたから女性恐怖症になってるんだわ」
「生意気言うな。僕が女っ気無しで過ごしたかどうかなんて何故分かる」
「そんなの分かるわ」
「どうしてだ」
「なんとなくよ」
「馬鹿にしているな」
「違うわ、だって清潔な匂いがするもの」
「今度はおだてるのか」
「水曜日って言ったら明日じゃない」
「そうだ」
「それじゃ私買い物して来て上げる」
「買い物ならもうしてきた」
「違うわ、明日の為に」
「子供の遠足じゃあるまいし、菓子なんか要らん」
「お菓子じゃないわ」
「じゃ何だ」
「新しい綺麗な下着」
「なんで?」
「だって男と女ですもの。どうなるか分からないでしょ」
「何を考えているんだ君は」
「だって万一の為よ。万一の時に汚い下着だと恥をかくでしょ」
「万一なんて起こらん・・・と言いたい所だが、あの九の一が相手だと万一でなく万二くらいの可能性はあるかも知らんなあ」
「それを言うなら万五でしょ」
「マンゴ?」
「マンゴじゃなくてマンコだった」
「一体君はどういう頭の構造なんだ」
「ふふ、楽しみでしょう」
「馬鹿、あの女狐と関わったら一生の不覚だ」
「女狐ですって。結構色気あったわよぉ、女の私から見たって」
「あれは色気が服着て歩いているような女だ。色気以外何も無い」
「婚約者がいるんだから簡単に誘いに乗ったら駄目よ」
「誰が誘いに乗るか」
「でも渋々だったら誘いに乗ってもいいわ。そうすればやり易くなるじゃない」
「君は一体宇宙人なのか?」
「どうして?」
「考えることがおよそ地球人の常識とかけ離れている」
「あら常識なんて世代が代われば変わるものなのよ」
「確かに君とは1世代も年が違うな。僕に娘がいなくて幸いだった」
「そんなこと言ってるから女っ気無しになっちゃうのよ。まだ枯れるのは早いわ」
「余計なお世話だ」
「と言う訳でとにかく新しい下着を買ってくるわね」
「何が、という訳だ」
「任せておきなさい」