結婚式-1
オマケ【由香里先生の恋物語】
【結婚式】
「新郎各務星司、あなたはここにいる小島優子並びに手島悠子を、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻達として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」
「はい、誓います」
優子と悠子、その都度姿を変える花嫁を見詰め、いつものように落ち着いた雰囲気で星司が誓った。
「新婦小島優子並びに手島悠子、あなたはここにいる各務星司を、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?」
「はい、誓います− −はい、誓います」
2人の花嫁は恥ずかしそうに星司を見詰め、幸せを噛み締めながら誓いの言葉を返した。
「えーっと、誓いのキスは後でまとめてってことで。次、雄一な。え〜、新郎手島雄一、お前はここにいる各務陽子を、以下同文でいいか。どうだ雄一、誓うか?てか誓え」
星司達に愛を誓わせた者が、それまでの厳かな雰囲気から一転、砕けた口調になった。
「ふざけるな宮本、真面目にやれ!」
雄一が高校時代からの友人を睨み付けた。
「おいおい、そんな怖い顔したら花嫁に嫌われるぞ」
「うふふ、宮本くん、大丈夫よ。そんなことくらいで嫌いになりません。で、どうなの雄ちゃん?誓えるの?」
幸せ一杯の陽子は、宮本らしい進行を受け入れ、楽しそうに雄一を促した。陽子に言われたなら仕方がない。
「えっ?あっ、ああ。えーっと、私手島雄一は、ここにいる各務陽子のことを、今後何があっても全身全霊をかけて、妻として愛し、敬い、慈しみ、守り抜くことを誓います」
雄一は陽子の肩を力強く持ちながら誓った。
「よく言った!忘れんなよ」
「うるせー」
「え〜、新婦各務陽子、あなたはここにいる手島雄一を、病める時はないと思うけど、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、てか、雄一、陽子さんを貧乏で苦労させんなよ」
「わかってるよ」
「えーっと、脱線した時も」
「脱線はお前だろうが」
「新郎は口を慎みたまえ。え〜、陽子さん、こんなヤツですけど、夫として愛し、敬い、慈しむことを誓ってくれますか?」
「はい、誓います。雄ちゃん、よろしくね」
これまでの関係性のままに、陽子が親しみを込めて誓った。
「お、おう」
「陽子さん、ありがとうございます。こんな半端なヤツですがよろしくお願いします。では、お待たせしました、誓いのキスをどうぞ。あっ、キスの相手を間違えないように。それとくれぐれもキス以上に発展しないようにお願いしますよ」
宮本のジョークとして会場は沸いたが、当の宮本は半分以上は本気だった。
星司と雄一は苦笑いを、優子(悠子)と陽子は照れ笑いを浮かべて列席者の前で誓いの口付けを交わした。
今回の結婚式を、この様な人前式にしたのには理由があった。悠子も自分と同じ花嫁として祝って欲しいと、優子が願った事が発端だった。
雄一と陽子との合同結婚式は問題ないとしても、星司に対する新婦の名前が連名だったことは問題だった。新婦達はウェディングドレスを望んでいたため、当初チャペルを当たったが、カトリックはもちろんのこと、プロテスタントにもそれが原因で断られていたのだ。
ならばということで、高層ホテルの会場を借りて人前式にすることにし、友人代表の宮本が司会で式を進め、その流れのまま披露宴を執り行う形式にしたのだ。
物事の本質さえ捉えていれば、格式に拘らない各務家なので、月司を始め、親族一同は温かく式を見守った。