ミントジュレップ-3
「でも、ふいに云っちゃう事があるかも知れないから。ごめんな、吉田君を疑ってる訳じゃなくて」
解ってる。
「解ります。大丈夫です」
心配なんだ。ユリの事が。そういえば、病院に行こうと勧めてくれて、一緒に来てくれたのも健吾だと云ってた。
「ユリさんは、幸せですね」
微笑もうと思ったけれど、巧く笑えない。
「吉田君?」
涙が出そうだ。
ユリが羨ましい。
僕は違う。
僕は人を殺してもいない。酷い事をした事もない。
人に言葉に出来ない程酷い事をしたって死刑にならない事が山のようあるのに、ゲイはなる。
そりゃ日本では違うけど、罪になるんだ。
生きてるだけで許されないんだ。
ユリは違うのに。
「僕は、誰にも云いませんから」
ユリの事も。
ゲイである事も。
だから、もう話はお終いだ。
僕が頭を下げて用具室を出ようとすると、健吾は―――僕の腕を掴んだ。