転校生-2
森村の学校からの帰り道は、アナスタシヤと同じ方角だった。二人の家はごく近かったのである。アナスタシヤは森村と並んで歩いた。
「女のを見た感想は? 初めて?」
「なんかよく見えなかったけど、臭かった。変なにおいがした。」
「男子はにおい違うの? ボッキしたよね。嬉しかったんでしょ。」
森村は答えなかった。
「あたしの、見せてあげるよ。見たいでしょ? それで射精して。」
森村は黙っていた。
「見たいかって聞いてるのよ。」
アナスタシヤは森村の腕をつねった。
「痛い!」
「こっち、来て。」
道路脇の杉林に森村を連れていったアナスタシヤは、向かい合って立つと、森村の腕をぐいと引き、自分のズボンに入れさせた。パンツの中にまで押し込んだら、脚を開いた。
森村には初めての、知らない違和感だった。
アナスタシヤは、寒さのせいでなく頬を上気させている。
両脚の真ん中が何もなく、溝になっている。丸く盛り上がった前の骨がはっきり分かった。
アナスタシヤはその溝の奥へ森村の指を押し込んだ。肉のあいだが深く凹んで奇妙に濡れていた。二本の指はますます濡れていく。どこからぬめりが来るものか探ろうと、森村は指を適当に動かしてみた。柔らかないぼのようなものを根元に挟んだ。
「うっ!」
アナスタシヤは低く唸ると、腿を固く閉じて身を強張らせ、強く森村に抱きついた。少女の長く茶色い髪は、苦味のある花の香りだった。
少女は口に口を押し付けてきた。森村の唇を舌が割って入った。森村が、挟んだ指を止めずに動かしていたら
「あ、は、ああん。」
アナスタシヤが不自然に腰をくねらせた。それから首を仰け反らせ、しゃがんでしまった。自然、森村の手は少女のズボンから抜けて出た。
「あ、あたし、おしっこ少し漏らしちゃった。あんた、女の子のこと、詳しいのね。」
森村はかぶりを振った。それから、白く濡れている指を、アナスタシヤの見ている前で嗅いでみた。
「やっぱり変なにおいだ。」
「やめて。」
強い調子でなく、恥ずかしがりながら言った少女は、緑の瞳をきらきらさせながら、挑戦的に
「いっそ舐めてみれば。」
男の知らないものだからだろうか。嗅ぎ直してみて、不思議にも、他人の唾より汚くないと感じた森村は、そのにおう指を口へ入れてみせた。
「うそ!」
目を見開いた少女の顔は真っ赤になった。手袋をしたままの両手で口を覆った。
「本当にそんなことできるの!? あたし、あんたのこと、大事にする! 約束する。」
「じゃあ、普通に友達になってよ。」
指を嗅ぐのはやめないで、胡散臭そうに森村はそう言った。
これを機として、みな一様に女子たちは優しくなった。もともと、アナスタシヤに従わされていただけだったから、その圧力がなくなれば、誰も意地悪などする気は無かったのである。
ただ、付き合い方を知らない少女たちと森村とは、そのきっかけを、いつでも遡って最初の行為に求め直した。誰にとってもそれが一番簡単な、知り合うための思い付きだったからである。