[有害図書・後編]-5
愛の視界には夕陽のような裸電球と、更に妖しさを増した男達の四つの顔があった。
胸を圧迫してくる麻縄は腕の動きまで封じ、互いに結わえられた両の手首は全く離せない。
両脚も曲がったまま伸ばす事も出来ず、膝と足首に回された余り縄は背中の結い縄に絡められ、脇腹に密着するほどに太腿を引きつけて縛り止められてしまっていた。
『どうです?セーラー服を着た愛ちゃんの緊縛姿は?』
『どうもこうも最高ですよぉ。制服越しにも分かる二の腕への縄の食い込みっぷりが堪りませんなあ』
『太腿だってボリューム満点ですよ?脂の乗ったチャーシューみたいだ』
『やっぱりこれくらい〈肉付き〉が無いと駄目ですよねえ?間違いなく抱き心地は抜群でしょうなあ〜』
デブだと思っていた自分の身体に、この男達は賞賛の言葉を並べている……性の観点から見ただけの欲情の発露の何処に、喜べる要素があるだろう……逃げたい……でも逃げられない……地面に落ちた蝶々のサナギのように、愛は男達の足元でモゾモゾと蠢くだけだ……。
「きゃああぁあッ!?」
男に抱き起こされても、愛は悲鳴をあげるだけしか出来なかった。
どっかりと床に腰を下ろした男の胸の中、Vの字に股間を開いたままの愛に姿勢の自由は無い。
すぐ傍にしゃがんではジロジロと見てくる男や、自慢のカメラを向けてシャッターを切る男にも抵抗を示せない。
それは赤子に匹敵するほどの弱者にまで堕とされた事を表す光景であった。