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「運命の人」
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運命の人〜好き〜-1

「あった。」

只今、知人に知られないよう買い物中。見つかったら、塔也君と引き離される気がしたということから始まった。
ちょっと怪しいかもしれないけど、塔也君の制服を借りて頭は一つに縛り、彼の家にあったサングラスも借りてスーパーで買い物。この前、うどんつくった時に初めて買い物に倍以上苦を感じた。
うーん…。視線がちょっと痛いかも。
それに、意外にサングラスって不便なものだったんだなぁ。と、思いつつラベルを凝視したりする。


「ふぅ、疲れたぁ〜。」

私は玄関に入ると、買い物袋を床に置いて自分も座り込んだ。

「う〜ん。やっぱりこの格好疲れるし、…でも食品しまうのが先だよね。」

張り付くようなお尻を何とか床から引き離し、買い物袋を引きずってドアを開ける。すると、塔也君は起きていて驚いて私をじっと見つめる。

「出かけるなら相談して下さいよ。…その格好、怪しくて余計目立ったんじゃないですか?」
「あー…あはは。」

何だかもう、苦笑いしか出来なかった。親切にも、私が何故こんな格好で外出したかには触れて来なかった。むしろ、きっと賢い彼なら気付いていたのではないだろうか。
買い物袋から食品を冷蔵庫に移し替えると、同時に買ってきたトレーナーとスカートと靴下を持って脱衣所に入る。誰も見ていないのを分かっていながら、キョロキョロしてしまう。
着替え途中で、上半身を下着のみにした時自分の肌に目がいった。元から肌荒れしやすい私は、地黒と重なり全くいい肌なんてしていない。そして、ブラのカップがスカスカの胸は、嫌になる程肉付きがない。身体になんて、とてもじゃないけど自信が持てない。
それに比べて彼はどうだったろう。正反対もいいところ、透けるような肌でニキビすら見当たらない、綺麗過ぎる肌だった。恥ずかしいぐらい、私は彼が羨ましくなる。
そんな人と同じ空間で二日も寝泊まりしていたことに、今更ながら恥ずかしさに覆われるようだった。気まずいような気持ちがどっと溢れる。
まるで恥ずかしさをごまかすかのよう、トレーナーを被るように着た。それでもまだ清々出来ず、素早くスカートにはきかえて靴下を取り替える。
着替え終わって深呼吸をしてから、私は脱衣所を出た。
リビングに入り、平常を装いつつまず手を洗った。手だけでなく、熱い頭も冷えて欲しいばかりだった。
そういうところに、塔也君の多少違和感のある視線がやけに刺さっている。適当な格好でも、私服姿を見るのは初めてだからかと思うけど。その視線で余計に意識してしまう自分がいて、どうにかして欲しい状況であった。
そして、自分がはいているシンプルなフリルのスカートを見て気付いたことがあった。どうして、ズボンを買わずにこんな洒落てるようなものを買ってしまったのだろう。それに加えて短めなので、個人的に動きやすいようにと買ったつもりなのが、異性を意識してるように勘違いされてしまうようなものだった。
どこかでは分かっていたかもしれないのに、どうして考え改めようとしなかったのだろう。
わざと、塔也君を意識してるのを察されないようにごまかそうと話し掛けた。

「今度から制服借りなくても大丈夫かなぁ。これがあるしね。」

本当はこんなこと思っていない。私だということをバレないように、借りていたものだから。それなのに、気まずさ故に言葉をまともに選べずにいた。

「駄目です。ちゃんと制服着て出掛けて下さい。」
「あ、やっぱそうだよね…。…いいの、本当に?」
「…分かってるくせに。」


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