1-4
4.
PRRRR……PRRRR……PRRRR……
(え〜? 非通知?……こんなに遅い時間にいったい誰?)
「もしもし、わたしリカちゃん、いま、おもちゃやさんにいるの」
甲高くて素っ頓狂な声。
(ダイレクトメールみたいなものかしら……)
もやもやした気持ちで電話を切った。
PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……
(また?)
やはり鳴り止まないので通話ボタンを。
「もしもし、わたしリカちゃん、いま、おもちゃやさんから出たわ」
(もう! 迷惑ね!……)
不機嫌に電話を切った。
PRRRR……。
(しつこいわね!)
今度は一回で電話に出たが、やはり……。
「もしもし、わたしリカちゃん、いま、かどをまがったところよ」
「あのね! 誰だか知らないけど、宣伝なら悪質よ、余りしつこいと消費者センターに……」
しかし『リカちゃん』は構わず話し続ける。
「もしもし、わたしリカちゃん、いま、あなたのマンションのちかくよ」
「あのね、そんなわけないでしょ? いい加減にしないと怒るわよ!」
怒鳴りつけて電話を切ったものの、気味が悪いことこの上ない……。
PRRRR……
(うわっ)
また鳴り出すのでは? と身構えている時に鳴り出すと余計にびっくりしてスマホに手が伸ばせない。
PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……PRRRR……いつまでも鳴り続ける。
呼び出し音が止まった時は心底ほっとした……が。
PRRRR……PRRRR……PRRRR……
すぐにまた鳴り出した、出なければこの恐怖が繰り返されるだけ……おそるおそる手を伸ばして通話ボタンを押す。
「もしもし、わたしリカちゃん、いま、あなたのおへやのベランダにいるの」
(まさか、そんなはずは……この部屋は10階よ)
この都市伝説なら知っている、だとしたら……。
何も起こらない……耳を澄ましてみるが、ベランダからは何の物音もしない……。
おそるおそるカーテンを開ける……特に変わった事はない。
そっとベランダに出てみる……特に変わった事はない。
手すりから少し身を乗り出し、階下を見る……いつもどおりの静かな通り……。
その時だった。
「たすけて〜〜〜!」
悲鳴と共にリカちゃんが屋上から降って来た。
彼女はとっさに手を伸ばしたが、その瞬間、バランスを崩して……。