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リカちゃん
【ホラー その他小説】

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1-5

5.

 PRRRRRRR……PRRRRRRR……。
(え〜? 非通知?……こんなに遅い時間にいったい誰からよ……)
 しばらく放置していたが、なかなか鳴り止まないので通話ボタンを押す。
 
「もしもし、わたしリカちゃん、いま、おもちゃやさんにいるの」

 甲高くて素っ頓狂な声……
(ダイレクトメールみたいなものかしら……)
 もやもやした気持ちで電話を切った。

 PRRRRRRR……PRRRRRRR……PRRRRRRR……PRRRRRRR……。
(また?)
 やはり鳴り止まないので通話ボタンを……。

「もしもし、わたしリカちゃん、いま、おもちゃやさんから出たわ」

(もう! 迷惑ね!……)
 不機嫌に電話を切った。

 PRRRRRRR……。
(しつこいわね!)
 今度は一回で電話に出たが、やはり……。

「もしもし、わたしリカちゃん、いま、かどをまがったところよ」

「あのね! 誰だか知らないけど、宣伝なら悪質よ、余りしつこいと消費者センターに……」

 しかし『リカちゃん』は構わず話し続ける。

「もしもし、わたしリカちゃん、いま、あなたのマンションのちかくよ」

「あのね、何でここを知ってるのよ、そんなわけないでしょ? いい加減にしないと怒るわよ!」
 怒鳴りつけて電話を切ったものの、気味が悪いことこの上ない……。

 PRRRRRRR……。
(うわっ) 
 また鳴り出すのでは? と身構えている時に鳴り出すと余計にびっくりしてスマホに手が伸ばせない。

 PRRRRRRR……PRRRRRRR……PRRRRRRR……PRRRRRRR……PRRRRRRR……PRRRRRRR……PRRRRRRR……PRRRRRRR……PRRRRRRR……PRRRRRRR……PRRRRRRR……PRRRRRRR……プツッ。

 いつものスマホがなにやら不気味な物に見え、呼び出し音が止まった時は心底ほっとした……が。

 PRRRRRRR……。 
 すぐにまた鳴り出した、出なければこの恐怖が繰り返されるだけ……おそるおそる手を伸ばして通話ボタンを押す。

「もしもし、わたしリカちゃん、いま、あなたのマンションのげんかんにいるの」

(そんな……そんなはずは……)

 この都市伝説なら知っている……だとしたら……。
 その時、カチャリと鍵の音、続けて少し建てつけが悪い玄関ドアのギギィという音が……。

「もしもし、わたしリカちゃん、いま、あなたのおへやのまえよ」

(…………)

 スマホを持つ手が小刻みに揺れる。

「もしもし、わたしリカちゃん、いま、あなたのうしろにいるの」

 振り返りたくない……振り返ってもしそこに……でも、そのまま後ろから襲われるかも知れない……それよりは……。

「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 そこにいたのは…天井に届こうかと言う大きな信楽焼きのタヌキ、しかも立派な八畳敷きをぶら下げてニヤニヤと…。




(恐怖ですよ、あ〜た、笑っちゃいけません、自分がそんな目にあったらどうします?)


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