「おんなの子の性(サガ)」-1
ぴちゃ。
ウチの舌先が、丸みを帯びたそれの表面を撫でるように這い、息と一緒に唾液を呑む。甘い刺激が、喉の奥にまで絡み付いてくる。
「んっ」
甘くねばっこい、濃厚な甘液を飲み扱きながら、唇をすぼめて咥え込んだそれを、口の中から抜いた。
赤く濡れたそれ、棒付き飴を手の中で転がして、手持ち無沙汰に弄ぶ。
「……はあ」
自分の口から出ているとは思えない程に、重くてふかぁい、溜息が零れた。雲がほとんどない炎天下の空の下で、珍しく部活をサボったウチは一人、なんとも憂鬱な気持ちで屋上の床に座り込んでいた。
「ほんま、どないしょ」
冷たい床がウチのお尻とその前の方を冷やしてくれて、いつもは嫌いなこの姿勢が、今日はなんとも心地よかった。熱を帯び、未だに痛みが走る下半身を感じながら、ウチは手の中の飴を、ぱくりと口に含んで背伸びした。
空に向かって持ち上げた手首が視界に入って、ウチはその手を目の前に持っていく。
自分でも悲しいくらいに細くなった手首には薄っすらと赤いアザが付いていた。指でなぞれば、やっぱりひりひりとして痛い。
「はあ……」
いつだって優しかった京ちゃんに付けられた、ベルトで縛られたアトは、さすがに一日程度では消えなかった。それよりも痛い自分の股下が、否定できない現実を告げて止まない。忘れようとしても、頭から離れてくれなかった。
昨日のこと全てが悪夢としか言えない『あの出来事』は、本当にあったことであるのを何よりも自分が知っている。
そう思えば思うほど、やっぱり何かが信じられなくて、ウチは今日、一度も京ちゃんと話をしていない。
「はぁっ、はぁっ」
湿った汗と汚液で濡れた鈴子の股から腰を上げて、京介が離れていく。
「っう……う」
京介の吐息は荒く、鈴子の吐き出す声は途絶え気味だった。少女の服は乱れ、下着も引き千切られて無惨な姿に成り下がっていた。
「はっ……はあっ」
少しずつ息を整えていく京介のズボンもまた、己の精液と、鈴子から滴る鮮血に彩られて汚れきっていた。肩を揺らして、床の上に転がる親友を眺めていた京介の瞳が、自分の仕出かしてしまった事実を直視した。
「ぼ、僕……僕」
そそり立っていた少年の男根が小さく萎み、先から零れる白液が糸を引いて床に落ちていく。ねっとりとした空気に晒された互いの身体が、火種のように火照っていた。
京介の心は性欲に彩られ、鈴子の身は白濁の気持ちに犯されて、共に熱が冷めないうちに戻る理性と、互いの視線が痛々しい。
果て終えた京介を睨む鈴子の視線は、涙に濡れながらも鋭さを見せ、殺意すら垣間見せていた。それほどに、鈴子は怒っているのだと京介は悟る。
「ごめん、ごめんっ!」
謝って済むようなものではない。親友で大事だった女の子を、涙を流して駆け寄ってきた少女を、幼い自分の身体で犯したのだから。
「僕、なんてこと」
無意識という最低な言葉を飲み込んで、ただうろたえるばかりの京介。心の何処かで、鈴子の身体が自分の汚液で汚れている姿に新たな欲を感じながら、今はそれどころじゃないと唇を噛み締める。
服を剥ぎ取られ、肩や腰、下半身すら顕にした鈴子が涙を拭う。少年のベルトで縛られた手首が、ぎりぎりと少女の柔肌へと食い込んでいく。
「手、解いて」
掠れた声で鈴子が言う。その言葉が以外に冷静だったことに、京介は笑みを零した。慌てて手を伸ばし、硬く結んだベルトを解いてく。