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『BLUE 青の季節』
【青春 恋愛小説】

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『BLUE 青の季節』-17

何年ぶりかに入る美津子の部屋は綺麗に片付けられていて、当時なかったぬいぐるみが所々に置いてある、女の子らしい部屋になっていた。
だからだろうか。久しぶりに訪れた懐かしいはずのこの場所に来ても、信は懐かしさも、居心地の良さも感じなかった。まるで初めてクラスの女子の家に遊びに行ったときと同じような緊張が、そこにはあった。

「適当に座ってよ。私、お茶入れてくるから」

どうして急に、美津子の家に来ることになったのか。信はよく覚えていない。
病院を出てバスに乗っても美津子の嗚咽は止まらなくって、正直ほっておけなかった。
ただ信自身、まだ動揺している部分もあってこのまま帰るのはなんだか心細かった。真実を受けとめるには、時間が足りなさすぎた。

「はい、コーラでいいよね」

「お、おう」

「何みてるの?アンタ」

「ほら、アレ・・・」

といって信は机のうえに飾られた一枚の写真を指差した。それは小学校の修学旅行で撮った物で信が美津子と唯一、二人で一緒に映っている写真だった。花やしきのお化け屋敷の前で美津子はちょっと引きつった笑いをカメラに向けている。

「こんな恥ずかしい写真、まだ持ってたのかよ」

「記念だからね。アンタが呑気な顔して口開けてない写真なんて他にないもの」

「よく見ろよ、お前なんかもっと非道いじゃねーか。美津子、お化け屋敷入んの嫌がってたもんな」

信が指摘してやると、美津子は顔を真っ赤にして反論した。

「ち、違っ!それは単にカメラ映りが悪いだけで・・・」

「アルバムとか、あったよな。もっと見ようぜ。お前の恥ずかしい写真」

そういって信は押し入れを開けると手当たり次第に探しはじめた。長い間忘れられていたのか押し入れの中は埃っぽかった。
めちゃくちゃにしまい込まれた引き出しの奥に、信達のたくさんが詰まっていた。昔の匂いがしなかった見知らぬ部屋で、そこだけは確かに変わらない懐かしさがあって、少し安心した。

「いやだ、やめてよ」

本当に恥ずかしそうな顔で美津子が咎める。
それに構わずに中を引っ掻き回すと、積み重ねられた雑誌類に隠れるようにして一枚の古ぼけたアルバムが顔を出した。


『夏合宿〜2005〜』


真っ青な装丁に彩られた表紙には汚い字でそう綴られていた。
それは去年、タケルの突拍子もない発言から始まった四人だけの小さな夏の思い出。三日押しで決めた弾丸スケジュールも、三人のエースに囲まれて泳いだ殺人的な練習も、今思えばすべてが楽しくて・・・そうだ。
これから先、もっともっと楽しいことがあるって、勝手に思い込んでた。


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