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「そのチョコを食べ終わる頃には」
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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『第1章 その警察官、秋月 遼』-2

――七月三十日。亜紀の誕生日。
 K市中心部にある駅前の結婚式場も備えた大きなホテルの一室。
 ああ、とひときわ大きな喘ぎ声を上げて、亜紀は汗ばんだ身体を震わせた。
「亜紀、亜紀っ! イくっ!」
「遼! イって!」
 激しく上下していた腰の動きが止まり、その身体を仰け反らせ、遼は呻いた。
 亜紀の身体の奥深くで遼の想いが弾け、二人は固く抱き合って唇同士を乱暴に重ね合わせた。

「素敵だった」
 仰向けになった遼の胸に指を這わせながら、亜紀は荒い息を整えながら、少しかすれた声で言った。
「僕も……」
 遼は亜紀に顔を向けてにっこりと笑い、その髪を撫でた。
 二人の息が落ち着き始めた頃、遼は隣に横になった妻の乳房を手で包み込むようにして言った。
「初めての時、痛い思いをさせてごめん」
 亜紀は呆れ顔をした。
「いきなりなに? そんなの当たり前じゃない。なんで今になってそんなこと言い出すの?」
「あの時、君、本当に痛そうだったから……何か急に思い出しちゃって」
「誰だってそんなものよ、女の子は」亜紀は遼に身体を向けた。「ずっと気にしてるわけ? あの時のこと」
「まあ……」遼は気まずそうに鼻の頭を掻いた。
「あたし、幸せだって思うわ」
 遼も亜紀に身体を向けた。
「だって、初めての人とこうして結ばれて、温かな結婚生活が送れて、その上自分の誕生日には毎年必ずこんな素敵な場所で過ごさせてもらえるんだもの」
 遼は微笑み、亜紀の身体をそっと抱きしめた。
「君がそう思ってくれてることが、僕にとっては一番の幸せだよ」
「遼……」
 亜紀が遼の両頬に手を当てると、それに応えて遼は愛しい妻の柔らかな唇をゆっくりと味わった。
「遙生くん、夏の大会のレギュラーに選ばれたんだって?」
 亜紀が言った。
「そう。団体戦の先鋒としてね。三年生が引退して初めての公式戦なんだ」
「気合い負けしたりしないかな。みんなに比べて小柄だけど」
「意外に芯は強くて思い切りがいいから、逆に相手の意表は突けると思うよ」
「いい子だよね、オフの時は遼に甘えてくるけど、部活の時はちゃんと敬語で話せるし」
「確かに場をわきまえた礼儀正しさは身についてるね」
 亜紀はその少年篠原遙生が大のお気に入りだった。去年の夏の部活のキャンプでバーベキューの手伝いをした時に初めて会って、そのはにかんだような笑顔と、少年らしい屈託のない態度が印象に残っていた。それから何度か部活のイベントで一緒に活動したり遊んだりした。遼が家に連れてきたこともある。春の合宿の時にも先輩を立ててくるくるとよく働き、時折遼と亜紀が一緒にいるところにやって来ては、他愛のないことを楽しそうに話してくれるのだった。亜紀が遙生のことを気に入っている最大の理由は、彼が夫遼によく似た風貌を持っていることだった。笑うとひときわ目を引く並びの良い白い歯、そして少し垂れた目尻。
「遙生、どんな大人に育つんだろうな……」
「きっとイケメンになって人気者になるとあたしは思うな。遼みたいにね」
 遼は頬を染めて言った。「僕はイケメンじゃありませんけど?」
「素直に嬉しがったら?」亜紀は笑った。「高校生の頃の遼に似てるよ。何となく。持ってる雰囲気がね」


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