山の湖畔-3
「素敵よ、由紀子。ああ、なんて気持ちのいいお尻なの」
江理花が噛みついた。
「痛っ!」
由紀子は状態を跳ね上げ、振り返って抗議の視線を送った。
「ごめんね、あまりにも美味しそうだったから。中はどうかしら」
「中?」
由紀子の疑問をよそに、江理花は尻をガっと左右に割り開いた。
「な……」
由紀子の野菊の花びらがその可憐な姿を現した。
「うふ、可愛らしいわ」
江理花は両手の親指を花びらの左右に当てがうと、グイっとそれを開いた。そこは少しだけ口を開きかけ、すぐに収縮して元に戻った。
「素晴らしいわ。まだ使ったことが無いのね」
「使う?」
「こうするの」
野菊の花芯に中指の先を添え、体重を掛ける江理花。
「ちょ、ちょっと、何て所に何て事を」
江理花がさらに体重を掛けると、そこは少しだけ指先を受け入れ、キュキュっと収縮した。
「いい具合よ。よく締まるわね」
更に奥へ入ろうとする指を、身を捩って追い出す由紀子。
「まあいきなりは無理かな。ちょっとずつ開発するといいわ」
「そんな所まで使うの?」
「快感のためだったら何でもする。それが自慰よ。覚えておいて損はないから。」
江理花が由紀子の腰骨に手を掛け、引いた。
「手を突いて膝立ちになりなさい」
「こう?」
素直に従い、由紀子は四つん這いになった。
江理花の掌がウェストを這いながら前に回り込み、由紀子の乳房を包み込んだ。
「立派に実ってるわね。出会った頃はもっと小さくて硬かったのに」
耳元でそう囁いて、耳たぶの淵に舌を這わせる江理花。ゾクっと身を縮めながらもされるままになっている由紀子。
「さあ、いらっしゃい……」
江理花は体を密着させたまま上体を起こし、更に後ろへと倒れていった。
「な、何? 何するの」
由紀子は後ろへ倒れていくことに恐怖した。
「大丈夫よ、私の上で仰向けになりなさい」
二人は空を見上げる形で重なり合った。森の木々の中に、湖の上空だけがぽっかりと青空を見せている。名前の分からない小鳥が二羽、チチ、と鳴きながら通り過ぎた。
「体の力を抜いて」
そう言いながら江理花は足を由紀子の上に回し、踵を膝に引っ掛けてグイっと左右に引いた。
「えっ?」
由紀子は膝を大きく開かれ、股間を空に向けて剥き出しに晒してしまった。
「や、やめてよ。誰かに見られたら……」
「どっちみち、見られたらアウトでしょ? 森の中で女二人が素っ裸で絡み合ってるんだから」
由紀子は改めて自分たちの行動の異常さを強く意識してしまった。
「私、帰る。放して」
「どうやって? ここに来るまでにいくつも分かれ道があったでしょう? 辿り着けやしないわ。それに万一、観光道路までたどり着けたとして、その格好で道を歩いていたら通報されるわよ」
「服を着てから行けばいいんでしょ」
「服は私の車の中。カギは私しか持っていない。それにパンティは……」
ポチャン、と音がして、湖面に波紋が広がった。
「な……投げたの? 私のパンティを」
「そ。石を包んでね。というわけだから、帰りたければ私のいう事を聞くしかないのよ」
「江理花、あなた……」
「あなたの為よ、由紀子。このくらいしないとあなたは壁を越えられない」
「壁?」
「そう。背徳の悦楽と常識の間に横たわる壁よ。それを越えなければ、他人に見せながら自慰をするなんて、出来っこないわ」
「あっ!」
由紀子の首に江理花の左腕が巻き付いた。
「暴れたら首が締まって死ぬわよ。さあ、弄りなさい、虐めなさい、自分の敏感なその部分を」
「こんな非道いことされながら出来るわけ……」
「どんな状況ででも出来るようになるための訓練よ。それを成し遂げた時、あなたは卒業する。それに」
江理花は唇をV字型に歪めた邪悪な笑顔を浮かべた。
「しないなら私が弄ってイかせるだけよ。会う意はこのまま失神させてオモチャにするのも面白いかもね」
由紀子は唇を震わせた。
「な、何て事を言うの? 江理花、目を覚まして」
「あなたこそ目を覚ましなさい。めくるめく悦楽の世界で、あたらしい自分として」
江理花の腕に力がこもった。
「う、ぐぅ……」
由紀子は顔を歪め、喉を鳴らした。
「弄りなさい、由紀子!」
涙をにじませた目で自分の首に巻かれた腕を見つめながら、由紀子は左手を下腹部へと這わせた。死への恐怖、背徳への不安、そして息の苦しさが彼女の思考を鈍らせ、逃れたい一心からの行動だった。
震えながら茂みを掻き分けていった指先が、肉の蕾に触れた。
「ん……」
ブル、っと身を震わせ、由紀子が脱力したのを確認すると、江理花は首を絞める力を緩めた。
「いい子ね。その調子よ。もっとしなさい」
言われなくても由紀子の指は動き続けていた。ありえない状態で感じたほんの一瞬の快感が彼女に倒錯の一撃を喰らわせ、疼きの炎を点火してしまったのだ。
「んぁあっ……」
江理花の足で思いっきり開かれてしまっている股間の秘肉の谷間。その花唇の内側にとめどもなく溢れかえっている白濁したトロトロの粘液を、朝露を浴びた真珠の様に鈍く深い輝きを放つ蕾に塗り付け、その周囲を巡るようになぞる由紀子の指先。
「う、うぅ……ああっ……」
眉根を寄せ半開きの口から涎を垂らし、狂ったように自分を虐める彼女の視界の隅に、森の奥で一瞬光るものが捉えられた。誰かいるのか。そしてその光の正体は。
しかし、悦楽に落ちている由紀子はあろうことかその方角に向かって腰を突き出し、見せつける様に弄くり回した。
もう一度森の奥が光った。
「ぅあああぁぁぁっ、くぅうっ」
由紀子の指の動きが速度の激しさを増した。
「あ、あ、あ、ああっ、あーっ……」
「イクの? ねえ、イきそうなの? 由紀子」