Requiem〜後編〜-5
────用意されていたトーストとハムエッグを、セリスが黙々と食べ終えた頃を見計らい、
先程までテーブルとキッチンを往復していたセッツァーがおもむろにセリスの正面の椅子に腰を下ろす。
そしてセッツァー手ずからお代わりのコーヒーをセリスのコーヒーカップに注いでくれるのを、昼食を食べ終えたばかりのセリスはぼんやりと眺めていた。
今まで意識して見ることがなかったわけだが、顔立ちや体格だけでなく、コーヒーを淹れる何気ない所作にも“熟年の男の色気”を感じさせるものがある。
「・・・・さっきは、済まなかった。墓参りも終わっていないのに・・・・言い訳になるかもしれないが、お前の歌声を聞いて、どうしても自分を抑えきれなくて」
セリスが出されたコーヒーに手をつける間もなく、
セッツァーはポリポリと頭をかきながら俯き加減で漸く口を開く。
そして目の前にいるセリスに対し深々と頭を下げた。
彼に頭を下げられて正直セリスは返答に困ってしまう。
元々セリス自身セッツァーとこういうことになることを薄々予感していたことだし、そうなることを望む自分の中の欲望をも自覚してもいた。
昨晩談話室でセッツァーの告白を聞いてから彼を受け入れた一連の経緯も、セリスにとっては自然な流れでもあった。
だから昨晩の流れの延長になる“今朝の出来事”についても、
セリスは謝られることはないと思っていた。
無意識とはいえ懐かしい歌を歌い始めたのはセリスだし、
自分を求めてくるセッツァーに応え、
彼に“感応”したのもセリス自身の意思だったからだ。
「・・・・貴方に謝ってもらう理由がないわ、セッツァー。
と、いうか・・・むしろ私は貴方とこうなったことが自然な流れだったから、謝られると逆に変な気分なのよ」
率直なセリスの言葉は、
目の前のセッツァーだけでなく、
心中を吐露したセリスの心をもざわめかせていた。
思わず顔を上げたセッツァーと目があった。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
視線を絡ませたまま、微妙な沈黙の時間が過ぎた。
お互いの沈黙と真顔のセッツァーの視線に、セリスはいたたまれなくなって思わず視線を反らしてしまう。
その時正面に座っていたセッツァーが椅子ごとセリスの傍らにまで移動し、
セリスの頬に吐息がかかる距離に身体を寄せてきていた。
膝の上に乗せられていたセリスの右拳にセッツァーの左掌がそっと添えられた。
「ありがとう、そういってもらえて、俺も・・・・・」
セリスは顔を上げ、再び2人の視線を重なる。
お互いの間には、
先程とはまた違った和やかな空気が漂っており、
どちらともなく相手の顔を見て含み笑いしていた。
「・・・・・ところで、今更なんだけど」
「ん?」
「折角のコーヒー、冷めちゃいそう・・・・まずは朝食続けない?」
「・・・極めて的を得た提案だ、しびれるね」
「ふふふ・・・・」
「フフ・・・・・」