Requiem〜後編〜-11
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―――その日村の中心部にある小さなレストランでの夕食は、
今までになく華やいだものになった。
セリスにとってみても、既にセッツァーとは身体を重ねることで今まで以上に身近な存在になっていたし、
2日前或いは先程までのもの憂いとはうってかわり、今回の旅の目的である墓参の日程を全て終了したこともあって、気を張ることなく自然に振る舞うことができた。
セッツァーも、自らの慰めとなり得る存在となった女性を相手に語り合い、その後に“待ち受けている時間”に対して胸を高鳴らせ、年甲斐なく興奮していた。
そんなセッツァーの心中をセリスも薄々察していた。まして明日には名残惜しくもフィガロ城には戻らなければならないのだ。
――――そして予想通りというか、
2人きりの夕食を終えて先に席を立ったセッツァーがセリスの傍らに近寄ると、そのまま上体を屈め、腰を上げかけたセリスの耳許に唇を近づけ囁きかける。周りに人がいないのにも関わらず、まるで2人きりの“秘め事”を楽しむかのように。
『今俺が座っていた座席の下に、お前の為にプレゼントを用意しておいた。今夜はお前がそれを身につけて私のところに来てくれるのを待っている・・・』
「!!・・・セッツァー・・・・」
頬が赤く染まり、慌てて顔を上げたセリスと視線を合わせることなく、含み笑いを浮かべながら先にその場を離れ宿屋に向かっていくセッツァー。
そして1人その場に残された格好のセリス。
その視線は否応なく先程までセッツァーが座っていた椅子に向けられていた。
「ここに・・・・」
半ば諦めつつ、半ば待ち望んだ心踊る時間がやってくる。
果たしてセッツァーが用意した“贈り物”とはどんなものなのか。
その先にある彼の“下心”も想像し自然と胸の動悸が高くなってくるのを自覚しながら、
セリスは大きな息を吐き、漸く腰を上げたのだった─────