Requiem〜前編〜-12
─────あれからベットに潜り込んでから数時間、
「・・・・・・・」
ベットの中で上体を起こしながら、枕元に置かれた目覚まし時計を見る。
時計の針はちょうど真夜中の1時前を指していた。
―――ザァァァ・・・・
―――バラバラバラッ・・・・・・
雷の音が遠ざかっていくのに合わせるかのように、
風混じりの雨が激しく窓ガラスを叩きはじめた。
微かに喉の乾きを覚えたセリスはベットを抜け出す。枕元に用意されていた水差しは既に空になっていた。
水や酒類は全て談話室にあるのだ。
船内の湿気にやや不快さを覚えていたセリスは、スリップにパンティーという風通しの良い出で立ちで、そっと部屋を抜け出し廊下に出る。
―――ヒタ、ヒタ、ヒタ・・・・・・
セッツァーを起こさないようにとスリッパを履かず、その素足に冷たいタイルの感触を感じながら、
セリスは暗闇の中をゆっくり進む。
目的とするは談話室の冷蔵庫。
この時間ならば、
ソファには彼が横になって寝息をたてている筈だった。
(・・・・・・)
セリス自身理由はどうあれ、深夜夫以外の男の部屋に導かれているのではと、やや息苦しさを覚えた。
だが一方で、
目覚めた後のセリスには不思議なことに、この船に戻ってくる途上に脳裏に浮かんだ迷いや戸惑い自体はもはやなかった。
むしろ彼女自身がそんな展開になれば受け入れてもいいという気分になっていたのだ。
それもこれも、
数年ぶりに再会したセッツァーに男を感じた時から引かれていた伏線のせいかもしれない。