二人の時間-4
屋上にはカフェがあり、私達は飲み物を注文して座った。広い空、広い土地。緑の多い町並み。気持ちよかった。
何であんな配信してたの?
家族とは仲いい?
学校はどう?
困ってる事ない?
僕とはこれからどうする?
そんな質問は全てやめた。自分はいま、旅行をしているのだと感じた。思えば、国内でさえ、旅行など何年もした事がない。旅情。落ち着いた優しい雰囲気の土地、隣には、限りなく美しい外国人の少女。このまま青空に吸われて、消えてなくなりたいと私はまた思い、目を閉じた。
「調子わるいの?」
「いや、気持ちいいんだ。」
薄目を開けた私はリディヤに答えた。
「ハジメは帰るの?」
いつ、という言葉はなかった。
「考えたくない。」
「あたしも。このまま空に消えちゃいたいな。」
私は目を開けた。
「僕も今そう思ってた。」
「二人でいなくなっちゃおうか。今日から夏休みなの。」
「そうだなあ。」
子供らしく、かつ子供っぽい夢に過ぎないお喋りだ。一人で思う分には夢に酔えても、二人で話しては、現実の姿しか浮かんでこない。つまりは家出か、心中か。国内でも国外へも、二人で逃げられるはずはなく、二人で死ぬのにどんな意味があるのか。ただ、人と一緒に自殺することへの憧れを、この時初めて私は理解したと思った。
「ホテルに戻る?」
「ん。」
「また寝ようか。」
「ん。」
リディヤはストローでジュースを飲み尽くした。