それぞれのアイノチカラ-3
「あまり乗り気ではないんですが、捜査の為なら仕方ありません。頑張ります。」
華英が連れて来た結衣はそう言った。苦笑いしたみんなの様子には気づかなかった。頭の中はどの店に行こうかしか考えていなかった。
「まず最大の捜査の目的は本当のオーナーが誰か突き止める事。あとはビッツコイン絡みで何か情報があったら少し掘り下げて聞いてみて?」
「はい。」
「あとは働いてるメンズの中で怪しい人がいたらチェックしてね?華英ちゃん は聞き込み言ってるからメイク変えるとか髪型変えるとかメガネをかけるとかしてね?」
「分かりました。得意のギャルカッコで行きます。」
「頼んだわよ?出来れば何度も行って常連になって欲しいのよね。そしたらきっと色んな情報が集まると思うの。2人とも週に何回ぐらい行けるかな??」
華英と結衣が顔を見合わせる。
「別に毎日でも…。あ、でもあくまで情報を集める為ですからね?決して喜んで行く訳ではありませんから。」
「アハハ…、分かってるよ…」
頭をかくしかない若菜。別に女が毎日風俗に行こうが悪い事ではないと考えている。男も女も収まり切れない性欲を犯罪に繋げる輩よりもよっぽど良いと思っている。風俗=汚らわしい…もうそんな時代ではないと思っている。
「結衣ちゃん、大丈夫??」
若菜は少し心配そうに見る。
「大丈夫です。もう騙されませんから。体は冷静さを欠いても頭はいつも冷静にいるよう、心がけてますから。」
何気に言ってはいるが、ある意味凄い言葉だ。冷静さを欠いた体…、その響きに若菜は少しムラっとしてしまった。
「じゃあ時間になったらお願いね?それまで誰を指名するのかどの店にするのか選んでていいから。頼んだわよ?」
「はい。」
2人は予備室にこもりスマホで行く店を決める事にした。
「ねぇ、もし…もし良かったらなんだけどぉ、私ね、ここ行きたい。」
「え?どれどれ…?」
結衣のスマホを覗き込む華英。
「3P専科ハピネス??」
「うん。男2人に自分とか、女2人に男1人とか、組み合わせ自由なんだって。私、密かに前から興味があって。」
「そうなんですか。あ、でも待って?女2人の場合って…」
「私と華英ちゃんと、キャストの男1人かな。」
「…、ええっ!?」
「1人じゃ心細いじゃない!ねぇ、お願い!一緒にプレイして??」
「ま、マジっスか…??」
「マジ。」
「…」
結衣と一緒に全裸になり、1人の男に絡む自分を想像する華英。ちょっと怖い気がしてきた。
「結衣さんの事、好きになっちゃったら、どうします…?」
「その時はその時で…」
「…」
華英はきっと結衣のこのハピネスに行きたい願望は止められないんだろうな…、そう思い覚悟を決めたのであった。