祝杯-1
「かんぱーい!」
「かんぱーい!」
カーン。
乾杯と言ってもお酒ではない。彩音は未成年だから。凛花はギリギリ飲んでもいいのだが、自分だけ酒を飲む気にはなれなかった。
今年の吹奏楽コンクールでも花乃森女学院は圧倒的な強さを見せつけ、三年連続二十八回目の優勝を果たした。
凛花の指導の下、グングン頭角を現した彩音は、クラリネットを始めてわずか四か月でレギュラーの座を狙うまでに成長したが、惜しくもコンクールの五十五人の定員内に入ることは出来なかった。
しかしながら、秋の定期演奏会において、彩音はソロの一つを担当することが決まっていた。今日はそのお祝いも込めた、凛花と彩音の二人きりの祝宴が凛花の部屋で開かれている。
「おめでとうございます、東城コンサートマスター。」
「ありがとう、天原補欠。」
「あはは!」
「うふふ。」
柏崎早霧の華やかなアルト、東城凛花のテクニカルな中に秘めた深い情熱、そして天原彩音のしっとりと染みわたる情念…。
毎年恒例になりつつある一回生部員によるソロは、部の将来を占う意味でも注目の的になっている。ここ最近の数年間、一回生ソロをした学生は翌年の部長、そしてコンサートマスターになっているからだ。
「さて、天原補欠。順当にいけば来年はあなたがコンマスなわけだけれども。覚悟は出来てる?」
「…出来てませんよ。っていうか、ソロをもらえただけで嬉しくって、先の事なんて考えられません。」
「なるほど。去年早霧先輩に私が同じ質問をされた時とは全然違う答ね。」
「凛花先輩は何と答えたんですか?」
「私以外に誰がやるんですか、よ。」
「うわ…らしいというか、よくそんな強がり言えましたねというか…」
「ふふ、さすがによく分かってるじゃない、私の事。内心ガクガクに震えてた。でも、そんな自分に負けるものか、ってムリしてた。早霧先輩にはそんなのお見通しだったのにね。」
ゴクリ、と一口飲んで凛花は切れ長の目でウィンクした。
「もう一年部長とコンマスやるとか出来ないんですか?」
「それ、全く同じことを言いかけたわ、早霧先輩に。」
「あ、やっぱりそう思いますよね?」
「ええ。でも、それは出来ない。」
「どうしてなんですか?まだ二回生なのに。」
「四回生は完全に引退。これは分かるわよね?」
「ええ、就職に備えてですよね。」
「そう。で、三回生は就職に備えてに備えて、の時期だから、参加はするけど役員はやらないの。」
「…秋本先輩、留年しないかなあ。」
「確かに。由衣なら技術的にも人格的にも適任と言えるでしょうね。悔しいけど、私よりうまくやるかもしれない。でも、彼女は違うから…」
「違う?何がですか。」
ゴクゴク…。凛花が急に飲むペースを上げた。
「まあ、来年の事はいいじゃない。今年の事を祝いましょ!さあ。」
「え?ああ、はい。」
カーン。
ゴクゴク、グビリ。
「あー、美味しい。これ、なんていう飲み物なんですか?」
彩音が尋ねた。
「さあ、特に名前は無いみたいよ。」
「あの、大丈夫なものなんですよね、飲んじゃって…」
彩音が心配そうに尋ねた。
「大丈夫よ。去年も飲んだし。私も早霧先輩も生きてるでしょ?」
「はあ…」
ゴクン。
ゴク、ゴク…。
「あー、美味しい。これ、なんていう飲み物なんですか?」
「コラコラ、ついさっき同じこと訊いたじゃ…」
「きゃはは!ふざけてみただけだよーん。」
凛花は静止し、口を半開きにして彩音を見つめた。
「彩音…もう効いてきたの?」
「何がですかぁ?」
ゴクゴクゴク、ゴクン。
「ちょ、ちょっとペース早すぎるかもよ、彩音。」
ゴクゴクゴクゴク、ゴクゴクゴクゴク…。
「プハァ!」
「そんなに急いで飲んだら、あなた…」
「何よ。いいから脱ぎなさい、凛花。」
「ああ、やっぱり…」
「脱げ、コラー。」
彩音はややタレ目のつぶらな瞳で凛花を睨んだ。
「わ、分かったから。」
凛花は、ヤレヤレといった調子でカットソーに手を掛け、脱いだ。上半身は深いブルーのシンプルなブラ一枚になった。
「下も!」
「はいはい。」
「はいは一回!」
「性格変わりすぎじゃないの?あんまり飛ばすと後で恥ずかしい思いを…」
「脱げー!」
「…。」
諦めたような表情でジャージを脱ぐ凛花。しかし、彼女自身もだいぶキているのは、パンティの中央部を見れば分かる。
二人が飲んでいるのは酒ではない。また、危険薬物の類でもない。詳細な成分は不明とされているが、代々伝わる秘伝のドリンクだ。
「脱いだわよ。」
「ぜ、全部、全部…」
彩音はギンギンの目で凛花の体を見つめている。
「ねえ彩音。私、脱ぐより脱がされたいかも。」
「上等だー!」
「うわ、ちょ、ちょっと…優しくしてね。」
彩音は凛花に馬乗りになり、ブラを剥ぎ取った。パンティも乱暴に引き摺り下ろし、ガっと足を広げさせて…。
「あふん…」
凛花に声を漏らさせるほどの勢いで股間をしゃぶりまくった。
グジュ、グジュ、グジュルル。
「ああ…はあぁ…そ、そんなに非道くしないで…」
「こうかぁ、こんな風にされたいかぁ、もっとかぁ。」
グチュ、グジュジュ、グチュチュ。
「ああ…もっと、もっとして下さい。」
凛花は彩音に合わせてあげているのではない。本気で感じ、求めている。彼女にもドリンクの効果が出ているのだ。