見付けた-1
今年も大勢の新入生たちが、ピンクの花びらの舞い落ちる中、軽く息を切らせながら坂道を登っていく。くねくねと曲がりくねった桜並木の石畳を上りきった先にある正門へと向かって。
真新しいお揃いの制服、お揃いのバッグ、お揃いの靴…。しかし、没個性というわけではない。顔や髪形や体形が違うのはもちろんのこと、その表情が仕草が足の運びが、それぞれにさまざまに、心に秘めた学院生活への不安や期待を物語っている。
「どう?見付かりそう?」
三回生の柏崎早霧(かしわざき さぎり)が、吹奏楽部の後輩の東城凛花(とうじょう りんか)に気さくな調子で尋ねた。
切れ長の目をさらに細め、内心の緊張を隠すようにキュっと口を結んだ凛花は、曖昧にうなずくばかりで新入生の列から目を離そうとしない。
「コラコラ、そんなに固くならないの、凛花。見付かる時は自然に目に入ってくるから。」
「あ、はい、すみません。」
凛花の口元に、ようやく笑みが浮かんだ。
「思い出してごらんなさい、あなたと私が出会った一年前を。自然に見付けたでしょ?私を。」
「ええ、そうですね。お出迎えの先輩方の中で、ひときわガチガチに緊張してらっしゃったので、すぐに目が行きました。」
「う…。そ、そんなに酷かったかしら?私。」
「あはは、冗談ですよ。確かに緊張はされてましたけど。」
「冗談、ねえ…。あなた、この一年で変わったわね。」
「そうですか?自分では変わった感じはしませんけど。」
「いいえ、変わったわ。冗談の一つも言うようになったんだから。」
早霧は遠い目で凛花を見つめた。まるで一年前の彼女と今の彼女を重ねて見ているかのように。
知的な黒いショートボブ。ブルーのアンダーフレーム眼鏡の奥に切れ長の目を覗かせるスリムな顔立ち。
長身のスレンダー・ボディに制服がタイトにフィットし、膝上丈のスカートの下にはスラリと長い脚が伸びている。
全体に細身ではあるが、出るべきところはしっかりと出たメリハリの利いた体形をしている。
「そういう先輩だって変わりましたよ?綺麗だけど少し怖い人、って印象だったのに。」
ナチュラルなウェーブが掛かった華やかな栗色のセミロング・ヘアー。ややふくよかな輪郭を描く整った顔立ち。
マネキンの様に理想的な体形は地味な制服をもドレスの様に着こなし、いつも花のような香りを纏っている。
「綺麗、だけいただいておくわ。」
二人は見つめ合い、微笑み合った。
入学式まではまだ少し時間がある。新入生の列はまだまだ続いている。
「さ、もうちょっとリラックスなさい、凜花。来年の入学式の朝に、『ひときわガチガチでしたよ』なんて言われないように。」
「わ、分かってますよ。分かってます…けど。」
はあ、っと、早霧は一つため息をついた。
「しょうがないわねえ。少しだけリラックスのお手伝いをしてあげるわ。」
早霧の右手が凜花の背中に回り、彼女のスカートのお尻を撫でた。
「せ、先輩!外ですよ?それに周りには人が沢山…」
二人は桜の木の根本に並んで立っている。
周囲にも同様に沢山の学生が立ち、新入生の列に注目している。
「いいから。さあ、自分でスカートの後ろを捲りなさい。」
「何を言って…」
「大丈夫だって。木の陰になってあまり見えないわよ。それに、新入生の列に気を取られてるから、こっちなんか見ないわ。」
「そんな保証、あるんですか?」
「ない、けどね。」
早霧の掌が、もう一度凜花の尻を撫でた。
凜花は口元をキュっと結び、上目遣いに早霧を見つめた。
そして一瞬の逡巡の後、右腕を後ろに回し、自分のスカートを掴んで持ち上げた。
早霧はスカートの中から現れた凜花の太腿の内側の素肌に手を這い上がらせ、パンティの中央に指を滑り込ませた。
「うっ…」
凜花は思わず声を漏らし、膝をガクっと揺らした。
「あれれえ?何だかんだ言っといて、すっかり準備が出来てるじゃないの。ジメっとしてるわよ?」
「や、やめてくださいよ。」
「素直になりなさい、凜花。欲しいんでしょう?」
早霧の手が凜花のパンティの中央を一往復した。
「う、うぅ…」
恨めしそうな目で早霧を見つめる凜花。しかしその瞳の奥にはほんのりと欲情の光がくすぶり始めていた。
「あら、布の上からじゃダメなのかな。」
早霧の指先がパンティとお尻の隙間に潜り込んだ。
「だ、ダメ、ダメですってば。」
凜花の、本心ではない言葉になんかお構いなしに、早霧は指先をくねらせた。
「ああっ、あはぁあ…」
火のついてしまった下腹部の奥の疼きをどうすることも出来ずに、凜花は眉根を寄せ、ため息のような声を漏らし、スカートを掴んだ手に汗を滲ませた。
「さあ、ジュブジュブになってしまっているあなたのここを、どうして欲しい?」
「どう、って…」
凜花の目はトロンと腫れぼったくなっている。既に早霧に逆らう気力など残ってはいない。
「早霧先輩は、どうしたいんですか?」
「そうねえ。」
早霧は大げさに考えるフリをした。